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特許・商標における手続の利便性を向上させる規定を導入へ ~「特許法等の一部を改正する法律案」と特許法条約・商標法に関するシンガポール条約の実施~ (※追記あり:施行日は平成28年(2016年)4月1日)

「特許法等の一部を改正する法律案(2015年3月13日閣議決定、6月2日に衆議院で、7月3日に参議院で可決により成立)」には、特許法条約(PLT)及び商標法に関するシンガポール条約(STLT)の実施のために整備される規定が含まれている。

以下、実務への影響が考えられる事項について概要を紹介する。

1.特許法条約の実施に関連する特許法改正

NEW特許出願の日の認定(新38条の2)
商標法第5条の2と同様の規定。3つの要件(「特許を受けようとする旨の表示(1号)、特許出願人の氏名若しくは名称の記載(2号)、明細書の添付(3号)」)が整ってさえいれば、出願日が認定される。
また、出願に不備があっても、補完することが可能(補完をした日が出願日となる)。

NEW先の特許出願を参照すべき旨の主張(新38条の3)
外国語書面出願を除き、先の特許出願の明細書、図面を参照することにより、出願後の所定の期間内に明細書、図面を提出することが可能(実務的には、優先権主張の基礎となる先の特許出願に関する情報のみでも出願が可能となるものと考えられる)。

NEW明細書又は図面の一部の記載が欠けている場合(新38条の4)
願書に添付された明細書、図面について、その一部の記載が欠けていることを発見したときは、その旨が特許出願人に通知され、出願後の所定の期間内かつ所定の範囲内に限り、補完することが可能(補完をした日が出願日となる)。

その他、外国語書面出願の翻訳文の提出期間を経過した場合、すぐに出願が取下げ擬制されることはなく、特許庁長官がその旨通知をするとともに、一定の期間内に限りその翻訳文を提出することが可能となる。

また、特許法の新5条3項では、期間経過後の延長請求が規定されているが、法律案(195条関係の別表)では手数料として1件につき上限68,000円(特許法50条(拒絶理由の通知)の規定により指定された期間に係るものの場合)が設定されている。

***追記(2015年12月25日、2016年1月5日)***
・2015年12月11日に公表された「特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備等に関する政令案」では、新5条3項の規定による期間の延長を請求する者が納付すべき手数料の額は、1件につき51,000円(特許法50条(拒絶理由の通知)の規定により指定された期間に係るものの場合)とされている。
・平成28年4月1日開始予定の「拒絶理由通知の応答期間の延長に関する運用の変更について」は本記事の末尾の追記を参照

2.シンガポール条約の実施に関連する商標法改正

出願時の特例の適用を受けるための証明書を所定の期間内に提出しなかった場合、すぐに出願時の特例の適用なし(出願日が遡及しない)とされることはなく、一定の期間内に限りその証明書を提出することが可能となる。(新9条3項)

 

上記1.及び2.のように、改正が予定されている事項が施行されれば、特定の手続や期間徒過については、出願人の負担軽減や救済の拡大が図られることとなる。

 

【出典1】経済産業省「「特許法等の一部を改正する法律案」が閣議決定されました

 

***追記(2015年7月7日、7月10日)***
・本法律案における「職務発明制度の見直し」に関する記事はこちら
・本法律案における「特許関連料金及び商標関連料金の改定」に関する記事はこちら

○第189回国会での審議状況

「特許法条約の締結について承認を求めるの件」
衆議院
参議院
5月21日に衆議院で承認され、6月17日に参議院においても承認された。

「商標法に関するシンガポール条約の締結について承認を求めるの件」
衆議院
参議院
5月21日に衆議院で承認され、6月17日に参議院においても承認された。

「特許法等の一部を改正する法律案」
衆議院
参議院
6月2日に衆議院本会議で可決され、同日に参議院へ送られた。
7月3日に参議院本会議においても可決され、法案は成立した。

7月10日に法律第55号として公布された。施行日は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日とされている。
特許法等の一部を改正する法律(平成27年7月10日法律第55号)

***追記(2015年8月5日、18日)***
特許法等の一部を改正する法律(平成27年7月10日法律第55号)」の説明(平成27年度特許法等改正講義ビデオ、スライド及びテキスト) 2015-08-03
説明会テキストの13ページに基づき、上記の特許出願の日の認定(新38条の2)に関する説明を補足

***追記(2016年1月19日)***

「特許法等の一部を改正する法律(平成27年法律第55号)の施行期日を定める政令」により、本法律は平成28年(2016年)4月1日施行と定められた。

【出典2】経済産業省「平成27年改正特許法等の施行のための政令が閣議決定されました

***追記(2015年12月25日、2016年1月5日、3月10日)***
2015年12月25日付けで特許庁は「特許出願及び商標登録出願における拒絶理由通知の応答期間の延長に関する運用の変更について」を公表した。平成28年(2016年)4月1日開始が予定されている今回の運用変更は、PLTおよびSTLTの規定を担保する本改正の施行に伴うもので、「出願人が国内居住者の場合の延長」、「『合理的な理由』を不要とすること」、「拒絶理由通知の応答期間経過後に行う期間延長請求」等に関するものとなっている。

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