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特許・実用新案審査基準及び審査ハンドブックの改訂 ~進歩性に関する事項をはじめとして記載全般が簡潔かつ明瞭に、事例・裁判例も充実~

特許・実用新案の審査基準及び審査ハンドブックの改訂が2015年9月16日に公表され、10月1日から審査への適用が開始された。両者は下記のように位置づけられている。

また、既報のとおり、審査基準は構成が変更され、特定技術分野の審査基準は審査ガイドブックに移行されるなど、近年には無かった大幅な改訂となっている。本稿では、進歩性に関する事項等で実務的に注目できるポイントをピックアップして説明する。

■進歩性(審査基準 第III部第2章第2節)
進歩性の判断に係る基本的な考え方等の枠組みについては特筆すべき変更点はなく、下図における「論理付けのための主な要素」も従来から用いられてきたものである。しかしながら、記載は分かりやすくまとめ直され、新たに追加された留意事項等もある。なかでも、次の①~③は今後の出願実務において、頻繁に参照されるものと考えられる。

①主引用発明に副引用発明を適用する動機付け(3.1.1)
進歩性の判断において重要な要素である「動機付け」は、図中の(1)~(4)の観点を総合考慮して判断される。特に、(4)の「引用発明の内容中の示唆」については、「有力な根拠となる」として強い動機付けが得られることが明記された。

また、注としては、「当業者の通常の創作能力の発揮である設計変更等」が、副引用発明を主引用発明に適用する際にも考慮されることが記載されている。これは、主引用発明へ副引用発明を適用しやすい、つまり拒絶をしやすい方向の考え方が明記されたとみることもできるであろう。

②阻害要因(3.2.2)
本改訂前の審査基準では阻害要因に関する詳しい説明はなかったが、4つの類型を含む独立した項目として設けられた。意見書において阻害要因を主張する際には、具体的な当てはめを行いつつ反論することが肝要となるであろう。

③進歩性の判断における留意事項(3.3)
後知恵、主引用発明の技術分野・課題、周知技術、二次的な指標(例:商業的成功)など、6つの留意事項に関する項目が設けられた。例えば後知恵に関する2類型のように進歩性の主張に資すると考えられる言及も含まれている。

図 論理付けのための主な要素図 論理付けのための主な要素(※【出典1】第III部第2章第2節での図をもとに作成)

■プロダクト・バイ・プロセス・クレームの明確性要件(審査ハンドブック 第II部第2章2203~2205)
審査基準では、「プラバスタチンナトリウム事件の最高裁判決による「不可能・非実際的事情」について多くは記載されていない。一方、審査ハンドブックには、2015年7月6日公表の「プロダクト・バイ・プロセス・クレームに関する当面の審査・審判の取扱い等について」が、新たな例示を加えることなく、ほぼ同じ内容が盛り込まれた。

なお、特許庁ウェブサイトでは、2015年7月6日付け「プロダクト・バイ・プロセス・クレームに関する当面の審査の取扱いについて」からこれまでの内容を整理した「プロダクト・バイ・プロセス・クレームに関する審査の取扱いについて」のページを2015年11月25日付けで公表している。
(詳細については、関連記事「プロダクト・バイ・プロセス・クレームに関する審査・審判の取扱い ~「プラバスタチンナトリウム事件」に対する最高裁判決を受けて~」参照)

■範囲を曖昧にし得る表現(審査基準 第II部第2章第3節)
特許請求の範囲における「約」、「実質的に」等の表現が明確と判断される事例と共に、審査において「発明の範囲が直ちに不明確であると判断をするのではなく、審査官は、明細書及び図面の記載並びに出願時の技術常識を考慮して、発明の範囲が理解できるか否かを検討する」ことが明記された。

■その他(新設項目、改訂案に対する意見募集の結果等)
審査基準には、「第III部第2章第5節 発明の新規性喪失の例外(特許法第30条)」、「第III部第5章 不特許事由」、「第IV部第1章 補正の要件」、「第VIII部 国際特許出願」等が追加された。その他、「サブコンビネーション発明の明確性要件新規性・進歩性」に関する審査基準も新設されている。

また、審査ハンドブックでは、事例集及び審判決例集を含む4つの附属書A~Dが提供されている。

なお、出典1では「審査基準の追加・改訂について」へのリンクも提供されており、「審査基準及び審査ハンドブックの改訂のポイント」や「改訂ポイントの例(記載ぶりの比較)」のほか、意見募集の結果を参照することができる。審査基準専門委員会ワーキンググループでの配付資料とあわせて参照することで、改訂内容に対する理解を深めることができる。

【出典1】 特許庁「特許・実用新案審査基準
【出典2】 特許庁「特許・実用新案審査ハンドブック
【出典3】 特許庁「審査基準及び審査ハンドブックの改訂のポイント
【出典4】 特許庁「産業構造審議会知的財産分科会特許制度小委員会 第6回審査基準専門委員会ワーキンググループ 配布資料

【関連記事】
知財トピックス(日本情報):「特許・実用新案審査基準」改訂案に対する意見募集 ~審査基準の構成も変更へ~ 2015-09-10
知財トピックス(日本情報):プロダクト・バイ・プロセス・クレームに関する審査・審判の取扱い ~「プラバスタチンナトリウム事件」に対する最高裁判決を受けて~ 2015-09-10

 

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