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[意匠/英国] 子供用スーツケースの侵害訴訟、最高裁で判決

PMS International Group Plc v Magmatic Limited [2016] UKSC 12

イギリスにおいて子供用のスーツケースにかかる欧州共同体登録意匠権の侵害成否が争われていたが、2016年3月9日にイギリス最高裁判所による判決がなされた。

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判決では、上訴裁判所の判決を維持して「非侵害」とされた。すなわち、登録意匠は「ツノ付きの動物」との印象を呈するのに対し被告意匠は「より丸みを帯びており触角のある昆虫や垂れた耳を備えた動物(虎)」との印象を呈するとして、情報に通じた使用者(Informed User)に与える全体的印象(Overall Impression)が異なるとした上訴裁判所の判断を支持した。

この事件では、次の2点についても争点になっていた。
(1)意匠の表面に装飾(模様)が無いことが、意匠の特徴として成立するか否か
(2)CG図面による登録意匠に色彩のコントラストが表れている場合、当該コントラストが登録意匠の要素となるか否か

(1)については、最高裁は、一般論として、装飾が無いことは登録意匠の特徴となり得ると判断した。そして、「登録意匠の認定にはその意匠特有の事情・背景によって解釈されなければならない」と前置きをしながら、線図による図面は、CG図面に比べて、表面の装飾を備えないものではないと解釈され易く、一方CG図面は一般的に表面の装飾が存在していないことを特徴として含み易い、とした。

(2)については、最高裁は、登録意匠にはホイール部分が黒く本体部が灰色であるというコントラストが表れており、両部材の間に色彩のコントラストが存在するものと捉えることが自然であるとし、当該コントラストが登録意匠の要素となると判断した。

日本では、線図によって表された意匠が「無模様かつ一色」の意匠なのか「形状のみ」であって模様や色彩の限定は一切ない意匠なのかについて学説上の争いがある。今回の判決は、欧州における同様の問題に一定の指針を示している点で興味深い。すなわち、線図による意匠は「形状のみ」の意匠と捉えられる可能性の方が高そうである。

また、欧州での意匠出願に際しては、CG図面の持つメリット(曲面形状を表現し易い点)と、デメリット(無模様の意匠であると認定される可能性がある点)とを勘案して、作図方法を検討する必要があるだろう。

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