本事件は、出願中の特許発明の実施許諾契約に基づき実施許諾料を支払った原告が、出願の取り下げを理由に、出願人である被告に当該実施許諾料の返還を求めたものである。(H17.1.26 東京地裁平成16(ワ)13922)。

原告は、被告との間で以下のような内容を含む実施許諾契約を締結し、対象出願の最終処分確定前に実施許諾料を支払った。

「(1)被告会社は,本件出願の拒絶査定が確定した場合には,実施許諾料を原告に返還する。(2)(不争義務)原告は,理由または方法のいかんを問わず本件に基づく出願中の特許およびノウハウの効力について自ら争い,あるいは第三者をして抗争せしめ,または,第三者の抗争に援助を与えてはならない。」

その後、特許庁から拒絶理由通知書が被告に発送され,これに対し被告は出願取下書を庁に提出し、取下げを理由とする最終処分がなされた。原告の実施料返還請求に対する被告の主張は、

「本件出願の審査手続は,いずれも出願取下げにより“査定なし”として確定しており,拒絶査定は確定していない。」、

及び

「本件出願は,引き続いて開発された技術とノウハウを盛り込んだ後続の出願において,拡充,発展した形で存続している。」

というものであった。 これに対する東京地裁の判断は、以下の通りである。

「本件実施許諾契約全体の趣旨によれば,本件実施許諾契約にいう本件出願の「拒絶査定が確定した場合」とは,本件出願が特許として成立しなかった場合を意味し,本件のように特許出願の出願公開後に特許出願が取り下げられた場合を含むものと解すべきである。また、被告らは,後続の出願中の特許の存在を本件実施許諾契約に該当しない理由として主張するが,本件実施許諾契約はあくまで本件出願を対象とするものであるから,後続の出願中の特許の存在を理由に本件実施許諾契約に該当しないものと解することはできない。」

(H17.1.26 東京地裁平成16(ワ)13922)。

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