本事件は、最高裁において、特許権について専用実施権を設定したときであっても、当該特許権に基づく差止請求権を行使することができるかが判断された事案である(最高裁平成16年(受)第997号)。

(最高裁平成16年(受)第997号)

この事案は、被上告人が、本件特許権の侵害を理由として、上告人に対し、物件の販売の差止めを求める事案であり、本件特許権には、第3者を専用実施権者とし、範囲を全部とする専用実施権が設定されていた。上告人は、被上告人が本件特許権に基づく差止請求権を行使することができるとした原審の判断(高裁平成15年(ネ)第1223号)は不当であるとして上告した。

最高裁は、「特許法100条1項の文言上、専用実施権を設定した特許権者による差止請求権の行使が制限されると解すべき根拠はない。また、実質的にみても、専用実施権の設定契約において専用実施権者の売上げに基づいて実施料の額を定めるものとされているような場合には、特許権者には、実施料収入の確保という観点から、特許権の侵害を除去すべき現実的な利益があることは明らかである上、一般に、特許権の侵害を放置していると、専用実施権が何らかの理由により消滅し、特許権者が自ら特許発明を実施しようとする際に不利益を被る可能性があること等を考えると、特許権者にも差止請求権の行使を認める必要があると解される。これらのことを考えると、特許権者は、専用実施権を設定したときであっても、差止請求権を失わないものと解すべきである。」と判断した。

従来の通説・下級審判例では、特許権者は専用実施権を設定した後でも差し止め請求権を失わないとするのが有力であったが、今回の最高裁判決により、このような通説が支持される形となった。

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