blank_page米下院司法委員会の知的財産小委員会は5月16日、先に発明した企業や個人に特許の権利を認める「先発明主義」を改め、早く出願した者に特許を与える「先願主義」に転向する特許改革法案を可決した。

有名なトーマス・エジソンなどの発明家を生んだアメリカでは「先に発明した人」を尊重する風潮が強く、19世紀に採用した先発明主義を現在も続けている唯一の先進国である。しかし、現在、米国では先願主義に転向する動きがあり、今回の法案が成立すれば、先願主義を採る日本や欧州とようやく基準が同じになり、発明者の企業や個人の利便性が高まると期待される。

先発明主義では、先に発明したと証明すれば、特許出願が遅くても権利が認められる。すなわち、先発明主義は、先に発明した者に特許を認めるという考え方である。確かに理念としては、先に出願した者に特許を認める先願主義よりも優れているとも考えられる。

しかしながら、現実的には先発明主義は一般に以下の弊害があると言われている。

(1) 先発明者を決定するためには,訴訟類似のインターフェアレンスの手続きを必要とし,その手続きを遂行するためのコスト及び労力の負担が大きい。例えば、現実に、先に出願した人と、後から「先に発明した」と主張する人の間で「どちらが先に発明したか」を争う訴訟も多く、日本企業を含め、こうしたトラブルに備えるメーカーなどの負担は大きい。

(2) 先発明主義の下では,一刻も早く特許庁へ出願しなければならないという動機付けが弱く、米国が先願主義を採用する諸外国に対して知財戦略において遅れを取ることになる。

(3) 先発明主義の下では、特許権を取得したとしても、他人に先発明を主張されて、インターフェアレンスの手続きに突入する可能性があり、先願主義に比べて権利が不安定なものとなる。

上記の点に鑑み、ようやく米国でも日欧等と同じ先願主義に転向する動きが出てきたようである。

法案成立には、下院の本会議のほか、上院の通過も必要だが、上院は超党派による法案提出となっており、通過する可能性が高いようである。ただ、法案が一部修正される可能性も残っている。

いずれにしても、米国が先願主義に転向することで、在米外国企業で特許出願件数が最も多い日本企業が受けるメリットは大きいものと考えられる。法案がどのような形で成立するか、今後の動向を見守りたい。

以上

※この記事は一般的な情報、執筆者個人の見解等の提供を目的とするものであり、創英国際特許法律事務所としての法的アドバイス又は公式見解ではありません。