上下二段に構成されている商標について、上段及び下段の各文字部分の書体や色彩が異なる場合でも、同系色の色彩であれば、全体として一体性を有すると判断された審決例をご紹介します(不服2006-6598)。

本件商標は、緑色で筆写体風に書した「Smart」の欧文字と、青色で書した「MONION」の欧文字とを、上下二段に組み合わせてなる商標です。審査では、上段の「Smart」部分と下段の「MONION」部分とは文字の書体、色彩が異なっており、視覚上、上段の「Smart」部分が分離され「スマート」の称呼をも生じ得るから、引用商標「SMART」、「スマート/SMART」及び「Smart」に類似するとして拒絶されました。

しかしながら、審判では、本件商標中、上段の「Smart」部分は、語頭の「S」が下段の「MONION」部分の左上方にかかるように表示されており、下段の「MONION」部分の左上部を囲うように表示されていると指摘した上で、上段の「Smart」部分と下段の「MONION」部分とは、文字の書体や色彩が違っているとしても、共に寒色で近似した色彩であるから、全体として一体性を有すると判断され、上記各引用商標とは非類似であると判断されました。

従来の審査では、上下二段に構成され、且つ、それぞれの文字部分の書体や色彩が異なる商標の場合、上段ないし下段の各文字部分は視覚上分離されると判断される傾向がありました。

しかし、今回の審決では、たとえ書体や色彩が異なる場合でも、同系色の色彩であれば構成全体の一体性は否定されないと判断されており、従来の「書体・色彩が異なれば一体性なし」との判断から一歩踏み込んだものと言えます。今後の審査傾向にどう影響してくるか注目されるところです。

また、この審決は、実際の取引において登録商標の使用態様を検討する際にも参考になるかと思います。すなわち、横一連の態様で登録を受けたものの、実際に使用する際には上下二段の形で、且つ、上下で書体や色彩を変えて使用したいという場合も少なくありません。そのような場合であっても、この審決によれば、上段及び下段の色彩を同系色で統一することにより、構成全体の一体性が主張しやすくなるということになります。

商標の外観上の一体性は、結局は、需要者からみて一体的に認識されるかどうかに懸かっていると言えますが、少なくとも従来の「書体・色彩が異なれば外観上の一体性が否定される」という傾向は、今後、徐々に修正されていくと思われます。

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