blank_page複数の訂正事項を含む訂正審判について、特許庁の現運用は誤りであり、一体不可分の一個の訂正事項に当たらない、とする判決が出された。

平成20年5月28日、訂正審判についての知財高裁判決(平成19年(行ケ)第10163号審決取消請求事件)が出された。この裁判は、複数の訂正事項を含む訂正審判について、審決が、訂正事項を一体不可分なものとして一部の請求項についてしか判断を示さず、他の請求項について判断しなかったことの適法/違法性が争われた事件である。

特許庁の現行の運用によれば、訂正審判において、明細書等の記載を複数箇所にわたって訂正する場合、従前、これら訂正を一体不可分の訂正事項として訂正審判の請求をしているものとして取り扱ってきた。(特許庁審判便覧54-05)

すなわち、明細書等は常にその全体を一体不可分のものとして把握すべきものであって、明細書等の部分ごとに訂正を認めたり、認めなかったりすことは許されない、との特許庁の法解釈である。

したがって、訂正審判についての特許庁の手続では、複数の訂正事項のうち、一つでも訂正事項が認められないと、たとえ他の訂正事項が適法であったとしても、原則、訂正請求全体が認められない、との運用がなされてきた。

しかし、今回の知財高裁の判決は、このような特許庁の運用が誤りであると、次のとおり判断したものである。

(1)まず、明細書等の記載の複数箇所を訂正するときは、客観的・画一的審理判断の点から、原則として、一体不可分の訂正事項と解される。(特許庁の現行の運用に同じ。)

(2)しかし、客観的・画一的審理判断に該当しない場合、可分的な訂正請求があるとすべきである。

(3)本件については、訂正により削除しようとする請求項の発明は、他の請求項の発明と截然と区別されている。

(4)そうすると、請求人が当該請求項を削除する意思を明示し、かつ、他の発明と区別して判断可能な請求項は、これを分けて判断すべきである。

(5)したがって、一方の請求項についてのみ判断し、これと区別される他の請求項について判断をしなかった審決は誤りである。

知財高裁の一つの判決で、特許庁の現行の運用や便覧が直ちに変更されるとはいえない。が、特許庁では検討する方向とのことである。便覧の改正の有無や時期は未定であるが、便覧の改正前でも、本判決に基づく主張は有効と考えられるので、複数の訂正事項を含む訂正審判や、無効審判中での訂正請求においては、留意しておく必要があると考えられる。

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