平成19年(行ケ)第10409号 審決取消請求事件では、拒絶査定不服審判の請求時になされた補正が新規事項の追加に該当するとの判断を誤りと判断し、拒絶審決を取り消した。
  1. 審決の内容出願人は、拒絶査定不服審判請求時に、本願の請求項1の前段部分を「ダイオキシン類、PCBを等を含む有害物質を含有する処理対象水を浄化する連続処理方式の高度水処理方法において」から、「ダイオキシン類、PCB等を含む有害物質を含有する処理対象水を毎分0.025キロリットルから14キロリットルで処理し、ダイオキシン類の含有量を飲料水レベルにまで浄化する連続処理方式の高度水処理方法において」に補正した。なお、当該請求項1の後段部分には、オゾン処理によって処理対象水中に含まれる有害物質を酸化分解することが規定されている。

    被告は、「当初明細書等には、オゾン処理と併せて、紫外線処理、電気分解処理、炭化炉材処理などの処理を行うことで、処理対象水を飲料水レベルまで浄化することが記載されているといえるものの、オゾン処理だけで『ダイオキシン類の含有量を飲料水レベルにまで浄化する』という事項は、当初明細書に記載された事項ではない」として、補正を却下した。

    そして、補正前の請求項1~29に係る発明について、進歩性がないとして拒絶審決がなされた。

  2. 裁判所の判断裁判所は、審決における補正却下の判断に対し、以下の通り判示した。

    審決は、補正後の請求項1の記載から、後段に規定した構成のみにより、その前段に規定した飲料水レベルまで浄化する発明を含むことになった旨判断している。

    しかし、補正後の請求項1の後段は、オゾンによる有害物質の酸化分解工程を規定するものであり、オゾン処理のみにより前段に規定する浄化レベルを達成するものであるか否かについての記載は請求項中に存在しない。

    請求項1の前段における「おいて書き」は、発明の属する技術分野や当該技術分野における従来技術を特定するなど、当該発明の前提を示すことを目的として記載される場合が多い。このため、前段部分の記載は、「飲料水レベルまで浄化する」ことを目的とする高度水処理方法の技術分野における水処理の一工程としてのオゾン処理に係る発明と解する余地も十分にある。

    本願明細書の記載によれば、処理対象水の汚染の程度に応じて、オゾン処理に加えて、他の処理を予定しているものであることは明らかである。

    したがって、新規事項の追加にあたると判断した審決の理解は誤りであり、審決は取り消されるべきである。

  3. 考察補正却下前の請求項1では、工程がオゾン処理のみであるとは規定されていない点、本願明細書中の記載から当該請求項1の高度水処理方法は「オゾン処理工程を有する方法」と解釈され得る点、及び請求項1前段における補正は処理対象水の浄化の程度を限定するものであり、かかる限定事項に相当する内容が明細書中に記載されていた点を鑑みれば、上記補正が新規事項の追加には該当しないとする上記判断は妥当であると考えられる。

    今回の事例からも分かるように、発明の特長となる可能性がある事項を、「おいて書き」の部分に記載することは避けた方が無難である。また、補正によって、請求項に新たな発明特定事項を加える場合、明細書中の記載をそのまま採用すれば補正要件の充足性についての疑義が生じにくく、早期権利化に繋がる可能性が高くなる。このため、出願時から明細書中に補正の根拠となるような表現を盛り込んでおくことを心がけるべきである。

以上

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