特許無効で権利行使できなかった判決が続いているようですが、何らかの対策はとれないのでしょうか?

最近、アース製薬がフマキラーを相手取って特許侵害を訴えていた訴訟事件において、アース製薬の特許が無効であると判断され、アース製薬の請求が東京地裁によって棄却されました。また、ディスコが本間工業を相手取って特許侵害を訴えていた訴訟事件においても、ディスコの特許が無効であると判断され、ディスコの控訴が知財高裁によって否定されました。このように特許が無効であると判断されて訴えが棄却されるケースが多く見受けられるように思われます。

訴訟は、特許の有効性や侵害等について双方の見解が相違した結果、起こることが多いため、結果として、請求が棄却されてしまう場合があるのは仕方がない面もありますが、特許性があると特許庁によってお墨付きを与えられた特許権自体が、相当の費用をかけて行った侵害訴訟でそもそも無効であると判断されてしまうと、特許権者としては、怖くて権利行使を行うことを躊躇してしまうのではないでしょうか。日本では特許が無効になりやすい傾向があるといった問題提起もされており、また、判例も徐々に変わってきているようですが、実務的には、その移り変わりをゆっくりと待っているという訳にもいきません。

そこで、上記の訴訟結果から読み取れる対策の1つとして、上記の訴訟では、どちらも1件の特許だけで訴訟を行っている点が弱みの1つとして挙げられのではないかと考えられます。いくら強い特許であっても、特許権という性質上、場合によっては無効とされる可能性があるわけで、3本の矢の話ではありませんが、権利者側としては、3~4件程度の特許で侵害訴訟を行っていれば、確率的な話ですが、その内の1件位の特許は無効にもならず且つ侵害の主張を認容させることができたかもしれません。侵害訴訟は、発明を発掘出願後、時間が経ってから行なわれることが多いですが、いざ訴訟しなければならない場合に慌てないためにも、将来、権利行使しそうな重要な技術については、その技術の程度の高低はさておき、1つの発明を抽出して満足するのではなく、様々な観点から複数の発明を抽出し、『特許群』として複数の出願を行うことが極めて重要ではないかと考えられます。

ちなみに、アース製薬の訴訟事件では、フランスでの発明が重要な公知資料とされたようですが、訴訟対象案件が1件であれば、防御側もその1件の特許に対する公知資料の収集に全社を挙げて取り組みことができ、例えば、フランスの発明を発見することができる場合もありますが、仮に複数の特許があった場合には、公知資料の収集にかける労力も当然、分散しなければなりませんから、もしかしたら、フランスでの発明を見つけることができず、訴訟結果が変わっていたかもしれませんね。

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