上記審決取消請求事件では、審決における(1)審判請求理由補充書の実験結果(実験成績証明書の実験結果)を参酌することができないとした判断、及び(2)当該実験結果を参酌しても顕著な作用効果がないとした判断、に誤りがあると判断され、拒絶審決が取り消された。

1.審判における実験成績証明書についての判断

出願人は、審判請求理由補充書とともに、実験成績証明書を【参考資料1】として提出して、本願発明の進歩性を主張した。

本願発明は日焼け止め剤組成物に関するものであり、実験成績証明書には、日焼け止め剤組成物の一成分である「UV-Bフィルター」を「2-フェニル-ベンズイミダゾール-5-スルホン酸」に特定したことによる本願発明の効果を示す実験結果が記載されている。

この実験成績証明書の実験結果について、審決では、(1)本願明細書には「UV-Bフィルター」を「2-フェニル-ベンズイミダゾール-5-スルホン酸」に特定することによる効果が何ら具体的に記載されていないので、参酌することができない、(2)仮にこれを参酌したとしても、この効果をもって、当業者が予期し得ない格別予想外のものであるとすることはできない、と判断された。

2.裁判所の判断

裁判所は、「(1)本願発明の容易想到性の判断に当たり,本願当初明細書には,『UV-Bフィルター』として『2-フェニル-ベンズイミダゾール-5-スルホン酸』と特定したことによる本願発明の効果に関する記載がされていると理解できるから,本件においては,本願発明の効果の内容について,審判手続において原告から提出された,審判請求理由補充書における本件【参考資料1】実験の結果を参酌することが許される場合であると判断すべきであり,したがって,これに反して,審決が,同実験結果を参酌すべきでないとした判断には誤りがあり,また,(2)本願発明は,同実験結果を参酌すれば,引用発明に比較して当業者が予期し得ない格別予想外の顕著な効果を奏するものであって,引用発明から容易に発明をすることができなかったというべきであるから,審決が,本願発明は予想外の顕著な効果を奏するとはいえず,引用発明から容易に発明をすることができたとした点に誤りがあると解する。」として、審決を取り消した。

3.考察

本願出願当初明細書には、「UV-Bフィルター」として「2-フェニル-ベンズイミダゾール-5-スルホン酸」が好ましい旨記載されていたものの、審決にもあるとおり、「UV-Bフィルター」を「2-フェニル-ベンズイミダゾール-5-スルホン酸」に特定することによる効果は具体的に記載されていない。そもそも本願出願当初明細書の実施例には、本願発明の日焼け止め剤組成物の好適な組成及び製品の製造方法が記載されているのみであり、本願発明による効果が実証されていない。

このように出願当初明細書の実施例の記載が不充分である場合において、いわゆる後出の実施例として提出される実験成績証明書は従来参酌されていなかったものであり(例えば、平成17年(行ケ)第10389号「エテンザミド事件」(進歩性)、平成17年(行ケ)第10042号「偏光フィルム事件」(サポート要件)参照)、今回の判決はこの後出の実施例が参酌された点で注目すべきものであるということができる。

以上

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