3 月12日、インドで初めて医薬品特許に対する強制実施を許可する決定が行われた。

ムンバイ特許庁は、インド特許法section 84(1)に基づき、ドイツ製薬会社バイエルが生産・販売している抗癌剤ネクサバール(成分名:ソラフェニブ)と同じ薬を、インド製薬会社ナトコが生産・販売できるように許可した。強制実施期間はネクサバールの特許が満了される2020年までで、ナトコ社は総販売額の6%をライセンス料として支払うこと、自ら生産すること、少なくとも600人の貧しい患者にソラフェニブを無償で供給することなどの義務を負う。ナトコ社はバイエル社の薬価より97%安い値段で同剤を販売する予定だという。

今回の決定はインドで最初に行われたということで全世界の注目が集中しており、政府使用ではなく、民間で申請した強制実施に対する最初の許可である点で大きな意味を持つ。しかし、その賛否については異論が多いようである。また、ナトコ社が安価でソラフェニブのジェネリックを生産・販売することが他の国にどのような影響を及ぼすか注目される。更に、他のインドの製薬会社も、高価な抗癌剤、エイズ治療剤、糖尿治療剤等に対して強制実施の申請を考慮しており、今後も強制実施の許可が続くか注目される。

なお、インド特許庁は、インド特許法section 84(1)に規定された3つの要件、つまり(a)特許発明に関する公衆の適切な需要が充足されていないこと、(b)特許発明が適正に手頃な価格で公衆に利用可能でないこと、(c)特許発明がインド領域内で実施されていないこと、のすべてを認めた上で、強制実施を許可した。

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