2015年5月1日

 

「アクセス制御システム、アクセス制御方法およびサーバ」

 

第一審 大阪地方裁判所 平成25年(ワ)第6185号

第二審 知的財産高等裁判所 平成26年(ネ)第10092号

 

第1 第一審

1 当事者

原告:個人 → 被告:株式会社ミクシィ

 

2 事案の概要

原告が、被告の運営するSNSである「ミクシィ」において提供される「一緒にいる人とつながる」との機能が、原告特許権(特許番号 第5211401号)を侵害するとして、補償金請求及び損害賠償請求を行った事案。

⇒結論:請求棄却

 

3 本件特許の構成要件の分説(争いなし)

A ユーザにより操作されるユーザ端末の操作によりネットワークを介して特定の者同士がコンタクトを取る際に用いるアクセス制御システムであって, B 所定の地理的エリア内にいる者によるコンタクト可能状態にするための同意がとれたことを確認するための確認手段と, C コンタクトを取るためのコンタクト用共有ページへのアクセス要求を受付けるアクセス要求受付手段と, D 前記アクセス要求受付手段によりアクセス要求が受付けられたときに,前記確認手段による同意がとれたことの確認が行なわれたことを条件に,同意した者同士がコンタクトを取るためのコンタクト用共有ページへのアクセスを許容するためのアクセス制御手段と, E を備えた,アクセス制御システム。

 

4 イ号物件(争いなし)

以下の独立した各機能を備えたソーシャル・ネットワークサービス「ミクシィ」を提供するコンピュータシステム。 (ア)「一緒にいる人とつながる」機能 a 利用者がスマートフォンを操作することによりインターネットを介して,一定時間中に一定距離内にいる利用者を検索する際に用いる機能であって, b〔1〕利用者(以下,「利用者1」という。)がスマートフォンの「一緒にボタンを押す」を押すと,スマートフォンのGPS機能を利用し,一定時間中に一定距離内で「一緒にボタンを押す」ボタンを押した他の利用者を「一緒にいる人一覧」に表示する機能。 (イ)友人申請及び承認機能 b〔2〕利用者1が「一緒にいる人一覧」に表示された他の利用者(以下,「利用者2」という。)を選択すると,利用者2に対して,友人申請が送信され, b〔3〕友人申請を受信した利用者2が,友人申請承認をすると,利用者1と利用者2がマイミクとなり, b〔4〕利用者1の専用ホームページの「友人リスト」に利用者2がマイミクとして表示され,利用者2の専用ホームページの「友人リスト」に利用者1がマイミクとして表示される機能。 (ウ)友人リスト・メッセージ・つぶやき機能 c 各利用者の専用ホームページに表示される「友人リストボタン」,「メッセージボタン」,「新着メッセージが1件あります」,「つぶやきボタン」等のフィールドに張られたリンクを介して画面遷移する操作が受付けられて画面遷移すると,各利用者の専用ホームページ内の「友人リスト一覧表示」,「メッセージ一覧」,「当該利用者のつぶやき」等のリンク先のページが表示され, d 当該各利用者の専用ホームページ内の「友人リスト一覧表示」から選択したマイミクとの送受信メッセージの一覧ページ,「メッセージ一覧」から選択したマイミクや新着メッセージを送信したマイミクとの送受信メッセージの一覧ページ,「当該利用者のつぶやき」ページでは,他の利用者との間でメッセージを送受信することができる機能。

 

5 争点(裁判所が判断をくだしたもの)

・ 構成要件Bの充足の有無(争点1-(1)) ・ 構成要件Cの充足の有無(争点1-(2)) ・ 構成要件Dの充足の有無(争点1-(3))
6 裁判所の判断

(1) 構成要件B

「所定の地理的エリア内にいる者によるコンタクト可能状態にするための同意がとれたことを確認するための確認手段と,」

ア 「コンタクト可能状態」について

「本件特許発明は,本件明細書(甲2)によると,「初対面の人物同士が出会った後互いにコンタクトを取ることができるようにする」方法を提供する場合において,従来の方法では,自分の携帯電話のメールアドレスや電話番号を知らせて「連絡可能状態」にするのが一般的であったところ(【0002】),メールアドレス等の個人情報を伝えることに対するためらいや,現に伝えた場合の個人情報の拡散,目的外利用などの弊害が生ずることなどから(【0004】から【0007】),互いの個人情報(電話番号やメールアドレス)を通知しないで,連絡可能状態とする方法を提供するものである。  そうすると,構成要件Bにおける「コンタクト可能状態」とは,メールアドレス等の個人情報を交換せず,これを交換したのと同様に,利用者と相手方が連絡可能となる状態をいうものと解せられる。」

※コメント

・発明の課題・趣旨から文言解釈している。

・当事者の主張とは異なる理屈を立てている。

 

「前記前提事実(5)によれば,被告物件においては,利用者が他の利用者に友人申請を送信し,受信した利用者がこれを承認(友人申請承認)してはじめて,両者はコミュニケーションを取ることができるようになるのであり,友人申請が承認される以前は,被告物件を利用して連絡を取ることはできないのであるから,友人申請の承認が完了した状態が「コンタクト可能状態」に該当すると解される。

 

イ 「同意」について

「ア 上記(2)によれば,構成要件Bにおいて「同意」の対象となるのは,上記意味における「コンタクト可能状態にすること」であり,構成要件Dにも,「前記確認手段による同意が取れたことの確認」が含まれていることを考慮すると,被告物件における友人申請に対する承認が,構成要件Bの「同意」に該当するというべきである。」

 

◆原告による2つの意味での主張について

「イ 原告は,選択的主張として,利用者1と利用者2が「一緒にボタンを押す」ボタンを押すことが,構成要件Bの「同意」に当たると主張する(第一段階の同意,同意の意義〔2〕)。

この点,原告自ら請求項の文言を多義的に主張することの是非はさておき,証拠(甲12,13,乙3)及び弁論の全趣旨(前記前提となる事実を含む。)によると,被告物件においては,利用者が,「一緒にいるボタンを押す」ボタンを押した場合,同時期にその付近で同ボタンを押した他の利用者の全てが,「一緒にいる人一覧」に検索・表示されるのであって,この場合,当初の利用者とコンタクト可能状態になることを希望して同ボタンを押した他の利用者のみならず,何ら意思疎通なく偶然同ボタンを押した他の利用者も検索・表示されることが認められるから,この段階では,「一緒にいる人一覧」に表示された他の利用者が,当初の利用者とコンタクト可能状態になることに同意することの確認は存しない。・・・原告の主張は採用できない。」

※コメント

原告は同じ文言を選択的に2つの意味で主張している。これに対し裁判所は「原告自ら請求項の文言を多義的に主張することの是非はさておき」と前置いた上で、いずれの主張についても判断を下し、一方を容れ、一方を排斥している。

本件において裁判所は「さておいて」いるが、同じ文言を選択的に2つの意味で主張するという原告の戦略をどう評価すべきだろうか。本件において、被告の主張とかかわりなく、原告が積極的に2つの意味における主張(第1の主張、第2の主張という。)をしたものとは考えにくい。おそらく原告は、第1の主張に対する被告の反論を受けて、予備的・選択的主張として第2の主張をしたのだろう。しかしながら、同じ特許発明の権利範囲について2通りの解釈を主張することは、他の主張との整合性(1つの文言を異なる意味で捉えることにより、当該文言にかかわる構成と他の構成との関係に影響が及ぶ)や、裁判所に弱気との印象を与えてしまう懸念などから通常困難と思われる。特許請求の範囲の文言の意味を多義的に主張するという戦略が功を奏する場面はほとんど考えられないのではないか。

ウ 地理的情報の利用と、同意が取れたことの確認の時間的関係について

(ア)原告の主張

構成要件Bにおいて、「同意がとれたことを確認する」際に、「所定の地理的エリア内にいる」ことは必要条件ではない。構成要件Bにおける「同意」は、友人申請に対する利用者2の承認であり、被告物件において、友人申請の証人の際にGPSによる地理的情報の利用をしていなくとも、構成要件Bは充足する。

(イ)被告の主張

検索された後の友人申請及び承認機能は、本件機能を用いずに友人申請を行った場合と同じである。当該承認の際には、GPSによる地理的情報は利用されていない。

 

(ウ)裁判所の判断

「イ 原告は,地理的情報の利用時期が,最終的な同意確認前である場合も含まれると主張し,その根拠として,本件明細書中の【0129】,【0130】に,そのような構成が開示されていると主張する。しかし,明細書の記載が,直ちに特許請求の範囲の文言の意味内容に影響を与えるものではないし,当該段落の記載は,むしろ,あらかじめ利用者の過去の地理的位置に関する情報を登録し,コンタクトの申出の際に,登録した地理的位置と時間に合致する相手を検索するというのであるから,コンタクト可能状態とするための同意の際に,地理的情報を利用するものであることが示唆されており,この点からしても,原告の主張する解釈が導かれるとはいえない。」

 

※コメント

ここでは、発明の詳細な説明に基づく原告の主張が排斥されている。技術的範囲の解釈の場面では、明細書の記載に基づいてどこまで特許請求の範囲の文言を限定解釈できるかという点がしばしば問題になる。そのため、侵害訴訟では、被疑侵害者(通常は被告)が、明細書の記載に基いて限定解釈すべき旨を主張し、特許権者(通常は原告)が、明細書の記載は単なる一実施形態に過ぎないなどと主張することが少なくない。

本裁判所は、原告の主張に対し、「明細書の記載が,直ちに特許請求の範囲の文言の意味内容に影響を与えるものではない」と述べている。一般論としてはその通りであるが、問題は、「直ちに」ではなくとも、明細書の記載が特許請求の範囲の文言の意味内容に影響を与える場合があり、それはどのような場合かという点である。事案ごとの個別的判断とならざるを得ないが、一般的には次のようにいうことができるだろう。明細書の記載の中には、当該発明の技術的思想に直接かかわる部分と、そうでない部分がある。言い換えれば、当該発明の課題を解決するために必要な要素、すなわち“発明の趣旨”に関する部分と、そうでない部分である。特許請求の範囲の文言も、その趣旨から解釈することが求められる以上、発明の趣旨に直接かかわらない記載に基いて、特許請求の範囲の文言を限定解釈することは、否定されるべきである。本件明細書中の段落【0129】,【0130】の記載は、本件特許発明の趣旨にかかわらない部分であったと評価することができるだろう。

「ウ 構成要件Bは,所定の地理的エリア内に「いる」者による同意をその構成要件とし,「所定の地理的エリア内にいる者によるコンタクト可能状態にするための同意」を一体の要件として定めているのであるから,その確認も一体のものとしてなされることが予定されているというべきであり,地理的エリア内にいることと,コンタクト可能状態にするための同意とを分断し,所定の地理的エリア内に「いた」者について,その後に,コンタクト可能状態にするための同意のみを確認する構成は含んでいないと解するのが相当である。」

 

※コメント

ここでは「確認」の対象が争われている。原告が主張する「確認」の対象は「同意」であって、「同意」が「所定の地理的エリア内にいる者による」かどうかは「確認」の対象ではない。原告の主張によれば、「確認」の時点では地理的情報を使わない。これに対し、被告が主張する「確認」の対象は「所定の地理的エリア内にいる者による・・・同意」である。被告の主張によれば、「同意」が「所定の地理的エリア内にいる者による」ものであるかどうかも「確認」の対象となるため、「確認」の時点で地理的情報を使うことになる。

裁判所はクレームの文言上「一体の要件として定めている」という理由で「確認」の対象は「所定の地理的エリア内にいる者による・・・同意」と判断した。ここでは、発明の目的や発明の詳細な説明は根拠として挙げられていない。

 

(あてはめ)

「エ 前記証拠及び弁論の全趣旨によると,被告物件においては,本件機能を利用して,「一緒にボタンを押す」ボタンを押した他の利用者が検索・表示された後に,友人申請及び承認を行う場合,他の方法によって検索・表示された利用者に対する友人申請及び承認を行う場合と同様の処理が行われること,本件機能を利用してマイミクとなったかどうかは,被告物件のシステム上区別されていないことが認められる。  これによると,被告物件において,友人申請に対する承認があったことを確認する際に,その者が所定の地理的エリア内にいることの確認は行われていないことになる。」

 

※コメント

ここでは、被告の主張する理屈が採用されている。「他の方法」とは、インターネットを通じた申請・承認など、当事者の地理的情報を用いない方法であると考えられる。インターネットを通じた申請・承認も「コンタクト可能状態」にするためのものであるから、「同意」にあたると解される。イ号物件における「同意」によって「コンタクト可能状態」になった後は、当該「同意」がGPS機能を用いてなされたものか、インターネットを通じてなされたものか区別されない。したがって、イ号における「確認」は、地理的情報を用いるものではない。合理的な解釈であると思われる。

 

(2) 構成要件Dの充足性

「前記アクセス要求受付手段によりアクセス要求が受け付けられたときに、前記確認手段による同意がとれたことの確認が行われたことを条件に、同意した者同士がコンタクトを取るためのコンタクト用共有ページへのアクセスを許容するためのアクセス制御手段」

 

ア 原告の主張

「友人リスト一覧表示」から選択したマイミクとの送受信メッセージの一覧ページ等において、他の利用者との間でメッセージを送受信することができる機能は、「アクセス制御手段」に相当する。

 

イ 被告の主張

構成要件Dは「確認が行われたことを条件に」を規定しており、何らの条件判定手段を有しているが、イ号には条件判定手段はない。

 

ウ 裁判所

「(2)上記構成要件Dの文言からして,構成要件D中の「前記アクセス要求受付手段」とは,構成要件Cにいう「アクセス要求受付手段」であり,「前記確認手段」とは,構成要件Bの確認手段をいうことは明らかである。  したがって,構成要件Dは,構成要件Bにいう同意の確認とは別に,コンタクトを希望する相手方に対する「アクセス要求」を受け付ける手段があることを前提として,構成要件Cのアクセス要求が発生した際に,構成要件Bの同意の有無について判定を行い,同意が確認された場合に,コンタクトを許容することをその要件とするものと認められる。」

 

※コメント

クレームの文言のみからクレーム解釈をしている。

 

「(3)原告は,被告物件において,被告構成cの「各利用者の専用ホームページに表示される「友人リストボタン」,「メッセージボタン」,「新着メッセージが1件あります」,「つぶやきボタン」等のフィールドに張られたリンクを介して画面遷移する操作が受け付けられることが,「アクセス要求受付手段」に該当すると主張する。  この点,前掲証拠及び弁論の全趣旨によると,被告物件において,上記アクセス要求が発生するのは,すでに利用者同士がマイミクの関係にあることを前提としているのであり,マイミクとなっていない利用者同士では,「メッセージ」や「つぶやき」を利用しようとすること(アクセス要求に相当する)すらできない仕様になっていることが認められる。 (4)すなわち,被告物件は,構成要件Bにいう「同意の確認」に相当する友人申請の承認があってはじめて,「アクセス要求受付手段」を利用できる構成となっており,上記(2)にみたとおりの,同意があるかどうかにかかわらず,コンタクトを取りたい相手方にアクセス要求を受け付ける手段や,そのアクセス要求があったときに,同意の有無を判定した上でアクセスを許容するような構成を備えていないものと認められる。  また,逆に,被告物件において,原告の主張する「アクセス要求」が発生した際には,コンタクト可能状態にすることの同意が取れたことの確認は行われず,まして,その同意が,構成要件Bの要件である,「所定の地理的エリア内にいる者による」ことの確認は行われないものと認められ,この点からも,被告物件は構成要件Dを備えないものというべきである。

 

※コメント

構成要件Bは、「アクセス要求があった場合、確認があるかを判定する」。これに対し、イ号物件では、「確認がなければ、そもそもアクセス要求はできず、確認後にアクセス要求があった場合、再度確認があるか判定する処理はない。」

 

(3) 結論

「被告物件が,本件特許1の構成要件B及び同Dを充足しないことは明らかというべきであり,これと同旨の理由により,被告方法は,本件特許2の構成要件G及び同Iを充足しないことも明らかというべきであるから,結局,被告物件及び被告方法は,本件特許の技術的範囲に属しない。  したがって,その余の争点について判断するまでもなく,原告の請求はいずれも理由がないというべきである。」

 

※コメント

特許の有効性についても争点となっており、当事者の主張を概観したところそれなりに充実した主張がなされていたようであるが、有効性については判断されていない。控訴の可能性(本件は現に控訴されている)を考えれば、特許の有効性について判断することも考えられたところであるが、技術的範囲非充足の判断に自信があったということであろうか。もっとも、最近の裁判例においては、技術的範囲非充足の場合に特許の有効性を判断していないものは多い。なお、大須賀滋「特許訴訟の実務」(髙部眞規子編)55頁は、「充足論が特許権侵害訴訟の中心的テーマであることに変わりはなく、実際にも、充足論における判断のみで結論が導かれている事件も多い」と述べている。

 

7 分析

本件では、クレーム解釈の手法として、主に発明の趣旨(つまり課題)と文言とに拠っており、その他の明細書中の記載に基いた解釈はされていない。

本件は文言の意味自体というより、構成要件中の各要素の構造的・時間的関係が問題となる事案であったため、クレームの文言自体から解釈することに馴染む事案であったと評価できるだろう。

第2 控訴審

1 結論

控訴棄却。∵構成要件B,C,Dをいずれも満たさない。 

2 構成要件B

(控訴人の主張)

「被告物件における友人申請の承認は,構成要件Bの「同意」に当たるから,被告物件の構成…ないし…機能は,構成要件Bの「所定の地理的エリア内にいる者によるコンタクト可能状態にするための同意がとれたことを確認するための確認手段」に該当する」

 

(裁判所の判断)

「(構成要件B、C、Dの文言)・・上記確認手段は,「所定の地理的エリア内にいる者」であったかどうか,その者による「同意」があったかどうかを確認する機能を備えるものと解される。

このことは,本件明細書において,「本発明」の目的として,初対面の人物同士が出会った後に又は展示会等のイベントやコンサート会場に出向いた出席者同士が後に,相手と連絡を取ることができる状態(連絡可能状態)にしようとした場合に,従来から一般的に知られている,自分の携帯電話のメールアドレス又は電話番号を相手に知らせる方法では相手に個人情報を知らせることに対する不安やその個人情報を不適切に利用されるおそれがあるという問題があったことに鑑み,出会った者同士が相手方に互いの個人情報を通知することなく後々コンタクトを取ることができ,かつ,相手方以外の他人がその相手方に成りすましてコンタクトしてくる不都合をも防止できる「理想的な連絡可能状態」を構築する手段を提供することにある旨の開示があること,実施例として,共有仮想タグを生成する当事者の一方が自己の共有仮想タグ用IDを特定するデータ(可変共有仮想タグ用ID)を赤外線通信により他方の当事者の携帯電話に送信し,その他方の当事者の携帯電話がサーバ10に対して自己のユーザIDと受信した可変共有仮想タグ用IDとを送信し,両当事者が所定の時間内に所定の地理的エリア内にいることが判定された場合に限り共有仮想タグが生成され,その共有仮想タグに対応するWEBページを介して後々コンタクトをとる構成の開示があることと符合するものといえる。」

 

※コメント

「確認」の対象は「所定の地理的エリア内にいる者」を含むという解釈をするに際し、クレームの文言を第1の理由としている点で、原審と同様である。もっとも、控訴審ではこれに加えて、当該解釈をすることが「本発明の目的」と「実施例」の内容にも符号するという理由を付加している。原審の理由付けだけでは弱いという判断があったのかもしれない。

 

「本件証拠上,被告物件において,友人申請及び友人申請の承認の機能を実行する際に,友人申請をした利用者と友人申請の承認をした利用者が本件機能により検索された者であることを確認したり,あるいは,「所定の地理的エリア内にいる者」であったかどうか,その者による「同意」があったかどうかを確認する機能を備えていることを認めるに足りる証拠はない。」

 

2 構成要件C

※コメント

原審は、構成要件Cの充足性については判断せず、構成要件Dの充足性について実質的な判断をしているのに対し、控訴審は、構成要件Cについて実質的な判断をし、構成要件Dについては、いわばおまけの判断をしている。控訴審における構成要件Cの充足性に関する議論は説得的のように思われる。控訴審裁判所も、構成要件Cの充足性のほうが説得的に論じやすいと考えたため、原審の判断構造を変更したのであろう。

 

(控訴人の主張)

「・・・被告物件の構成dにおける「友人リスト一覧表示」から選択したマイミクとの送受信メッセージの一覧ページ,「メッセージ一覧」から選択したマイミクや新着メッセージを送信したマイミクとの送受信メッセージの一覧ページ及び当該利用者のつぶやきページ(とりわけ,グループを指定してつぶやくことによって生成されたグループ内限定のつぶやきページ)は,構成要件Cの「コンタクトを取るためのコンタクト用共有ページ」に,被告物件の構成cにおける「友人リストボタン」,「メッセージボタン」,「新着メッセージが1件あります」,「つぶやきボタン」等のフィールドに張られたリンクを介して画面遷移する操作は,構成要件Cの「アクセス要求」にそれぞれ該当し,被告物件は,構成要件Cの「コンタクトを取るためのコンタクト用共有ページへのアクセス要求を受付けるアクセス要求受付手段」を備えるから,同構成要件を充足する・・・。」

 

(裁判所の判断)

本件明細書には,本件発明1は,構成要件BないしDの構成を備えることより,所定の地理的エリア内にいた,連絡可能状態とすることに同意した者同士が,個人情報を相手に通知しなくても,同意した者同士のみにアクセスが許容されるコンタクト用共有ページを通じて後々コンタクトが取れるようになるという効果を奏することの開示がある」

「上記開示事項によれば,構成要件Cの「コンタクト用共有ページ」は,連絡可能状態とすることに同意した者同士のみにアクセスが許容され,その同意した者同士は,「コンタクト用共有ページ」を介してコンタクトを取ることを理解することができる。」

 

「しかるところ,被告物件における「友人リスト一覧表示」から選択したマイミクとの送受信メッセージの一覧ページ,「メッセージ一覧」から選択したマイミクや新着メッセージを送信したマイミクとの送受信メッセージの一覧ページ及び当該利用者のつぶやきページは,いずれも,利用者ごとにパーソナライズされた利用者専用のページであり,その内容は利用者ごとに異なり,その操作は当該利用者のみが行い,連絡可能状態とすることに同意した相手方であっても当該ページ自体にアクセスできるものではないから,構成要件Cの「コンタクト用共有ページ」に該当しないというべきである。  そうすると,被告物件の構成dは構成要件Cの「コンタクト用共有ページ」を備えるものとは認められないから,その余の点について検討するまでもなく,被告物件は構成要件Cを充足しない。」

 

※コメント

本件特許発明の「コンタクト用共有ページ」は「利用者ごとにパーソナライズされた利用者専用のページ」ではないという解釈は、被告(被控訴人)の主張を採用したものである。たしかに、SMSやLINEのページ(メッセージを削除できるが相手方のページには反映されない。壁紙を自分用に設定できるが、相手方のページには反映されない)と、電子掲示板(閲覧対象のページは全く同一である)とは、その構成が互いに異なっており、裁判所の判断は支持できる。

なお、侵害訴訟においては、イ号物件が特許請求の範囲を文言上充足しそうな場合であっても、実施形態の記載を読んでみると、そもそも想定している技術、場面が互い大きく異なるという場合がしばしばある。このような場合、裁判所はおおよそ非侵害の結論を導いているように思われる。本件も、裁判所にそのような印象を抱かせたのではないか。

 

3 構成要件D

「本件発明1の特許請求の範囲(請求項1)の記載によれば,構成要件Dの「前記確認手段による同意がとれたことの確認」は,構成要件Bの「確認手段」により「所定の地理的エリア内にいる者」による「コンタクト可能状態にするための同意」がとれたことの確認と同義であることは一義的に明らかである。  しかるところ,被告物件が構成要件Bの「所定の地理的エリア内にいる者によるコンタクト可能状態にするための同意がとれたことを確認するための確認手段」を備えていないことは,前記(2)のとおりであり,また,被告物件が構成要件Cの「コンタクト用共有ページ」を備えていないことは,前記(3)のとおりであるから,被告物件は,構成要件Bの上記「確認手段」及び構成要件Cの「コンタクト用共有ページ」を構成に含む構成要件Dを充足しないというべきである。」

 

※コメント

構成要件Dの充足性は、控訴審ではおまけになっている。

 

以上

弁護士 寺下雄介

※この記事は一般的な情報、執筆者個人の見解等の提供を目的とするものであり、創英国際特許法律事務所としての法的アドバイス又は公式見解ではありません。