(※続報の記事はこちら(実務面での注目点)とこちら(相当の利益に関するガイドライン及び関連資料のリンク集))

2015年3月13日に「特許法等の一部を改正する法律案」が閣議決定され、今国会(第189回国会)において審議が行われる予定である。今回の改正には「特許料等の改定」、「特許法条約及び商標法に関するシンガポール条約の実施のための規定の整備」も盛り込まれているが、最も注目されるのは「職務発明制度の見直し」である。以下、その見直しの概要を紹介する。

1. 改正の理由
・相当の対価を巡る訴訟のリスクが高まるおそれ
・イノベーションの障害となり得る、二重譲渡及び権利の帰属の不安定性の問題
・知的財産戦略の多様化

2. 改正の要点
・法人帰属
従来の予約承継と異なり、職務発明に関する特許を受ける権利を初めから法人帰属とすることが可能。これにより、二重譲渡及び権利帰属の不安定性の問題を解消。
・インセンティブ付与の法定化
従業員である発明者は、「相当の金銭その他の経済上の利益(相当の利益)」を受ける権利を有することを法定化(現行の対価請求権又はそれと同等の権利を保障)。
・ガイドライン策定を法定化
経済産業大臣は、インセンティブを決定するための使用者等と従業者等との間で行われる協議の状況等についての指針を定めることを法定化。これにより発明を奨励、及び訴訟リスクの低減。

3. 法人帰属とするための条件
法人帰属とするための条件は以下の通り。
・従業者等がした発明であること
・職務発明であること
NEW・職務発明規定等に、法人帰属の意思表示を示しておくこと

4. 従業員帰属とすることも可能
閣議決定された改正案では、上記の通り、職務発明に関する特許を受ける権利を初めから法人帰属とすることが可能とされている。しかしながら、法人によっては、従業者帰属とすることが望ましい場合もある。したがって、改正後も、従業者帰属とすることを可能としている。例えば、出典2によれば、従業者帰属とすることが望ましい場合として、以下のような場合が想定されている。なお、従業員帰属とする場合、職務発明規定等に意思表示をしておく必要はなく、現行法と同様の運用である。
・特許を受ける権利の従業者等帰属を希望する法人
特許を受ける権利を研究者に帰属させることが適切な大学や研究機関、経営戦略として従業者等帰属を選択する企業等。
・職務発明に関する契約・勤務規則等を有しない法人
特許を受ける権利が法人に自動的に帰属することで、法人に所属する発明者の権利が不当に扱われることを回避。

5. ガイドライン
相当の利益を定めるための使用者等と従業者等との間で行われる協議の状況等についての指針(ガイドライン)は、経済産業大臣により、策定され、公表される(新35条5項、6項)。なお、法人が相当の利益についての契約・規則等を策定するか否かは、従来通り法人の裁量である。

職務発明

【出典1】経済産業省「「特許法等の一部を改正する法律案」が閣議決定されました
【出典2】特許庁「我が国のイノベーション促進及び国際的な制度調和のための知的財産制度の見直しに向けて-産業構造審議会知的財産分科会特許制度小委員会-」2015年1月28日付

 

***追記(2015年6月4日、7月7日)***
・本法律案における「特許関連料金及び商標関連料金の改定」に関する記事はこちら
・本法律案における「特許法条約・商標法に関するシンガポール条約の実施」に関する記事はこちら

***追記(2015年5月28日、6月4日、7月3日、7月10日)***
第189回国会での審議状況
衆議院
参議院
6月2日に衆議院本会議で可決され、同日に参議院へ送られた。
7月3日に参議院本会議においても可決され、法案は成立した。

7月10日に法律第55号として公布された。施行日は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日とされている。
特許法等の一部を改正する法律(平成27年7月10日法律第55号)

***追記(2015年8月5日)***
特許法等の一部を改正する法律(平成27年7月10日法律第55号)」の説明(平成27年度特許法等改正講義ビデオ、スライド及びテキスト) 2015-08-03

***追記(2015年9月16日、11月6日)***
産業構造審議会 知的財産分科会 特許制度小委員会
第12回:議事要旨配付資料議事録
第13回:議事要旨配付資料

→ 当日の配付資料として、新35条6項の指針(ガイドライン)案等が含まれている

***追記(2015年11月13日)***
「改正特許法第35条第6項の指針案」が特許庁ウェブサイトで公表され、パブリックコメントの募集が開始された。募集期間は2015年11月13日~12月12日の1か月間となっている。

【出典3】特許庁「改正特許法第35条第6項の指針案に対する意見募集

***追記(2016年1月19日)***
「特許法等の一部を改正する法律(平成27年法律第55号)の施行期日を定める政令」により、本法律は平成28年(2016年)4月1日施行と定められた。

【出典4】経済産業省「平成27年改正特許法等の施行のための政令が閣議決定されました

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