<欧州連合司法裁判所>スペインによる単一特許関連規則無効の訴えを棄却
<イタリア>単一効特許・統一特許裁判所に参加の方向へ方針転換
欧州連合司法裁判所(CJEU)は2015年5月5日、単一特許規則および単一特許の翻訳言語規則という二つの規則の無効を求めていたスペインの訴えをそれぞれ棄却する大合議判決を下した。

今回の判決により、単一効特許及び統一特許裁判所の創設がEU法上問題ないと確認され、英語、ドイツ語、およびフランス語を翻訳言語の柱とする提案についての政治的および法律的な問題が事実上解消されたといえる。これにより、創設の準備作業がさらに進むと期待される。今回の判決は、欧州の大多数の知財関係者の期待に応えたものであるといえよう。

一方で、スペイン語は国連の公用語でもあり、ドイツ語およびフランス語よりも公用語人口が多い。その母国語が単一特許の翻訳言語として扱われないことは、スペインにとってはなかなか承服し難いことであろうと察する。世界的にも主要な言語が多く存在する欧州で特定の言語を選ぶ作業は、相当に難しいものであろう。

なお、スペインによる訴えは2013年4月にあった1回目の判決(提訴理由は異なる)に続いて棄却されたことになるが、1回目では共同で訴えを起こしていたイタリアが、ここへ来て、統一特許裁判所だけでなく、単一効特許にも参加する方針に転じたことが、欧州特許庁長官の2015年5月22日付けブログで言及されている。

<欧州統一特許裁判所準備委員会>欧州統一特許裁判所の料金案を公表
既報の欧州単一効特許の維持年金案とあわせて注目されていた欧州統一特許裁判所の料金案が5月8日に公表された。例えば、侵害訴訟の提起については11,000ユーロの固定手数料に加えて訴額に応じた追加手数料(0~220,000ユーロ)、無効訴訟については固定手数料のみで20,000ユーロが提案されている。なお、勝訴当事者が回収可能な訴訟代理人費用の上限額に関する案(訴額に応じて50,000~3,000,000ユーロ)も含まれている。

また、従来型欧州特許について統一特許裁判所ではなく現行制度通りに各国裁判所を管轄とするためのオプト・アウト(opt-out;適用除外)の費用としては80ユーロが提案されている(※後に費用項目が削除されたことについては、追記参照)。今回の料金案及び現状の規則案では、現時点で存続している欧州特許のオプト・アウトにも特許1件につき80ユーロが必要となるため、多くの従来型欧州特許を所有する特許権者は、今後の案修正の有無に留意しつつ、費用対効果の面からオプト・アウトの要否を検討する必要がある。

***追記(2016年2月29日)***
欧州統一特許裁判所のウェブサイトにて2016年2月26日付けで公表された資料によれば、準備委員会が合意に達した「裁判費用及び回収可能なコストに関する規則(Rules on Court fees and recoverable costs)」では、オプト・アウトに関する費用項目が削除された。

これにより、従来型欧州特許の裁判管轄に関するオプト・アウトの申請(Application for opt-out)及び撤回(Application for withdrawal of opt-out)のいずれについても、裁判所に対する費用は無料となる見込みである

しかしながら、従来型欧州特許の裁判管轄を各国裁判所とするためにオプト・アウトの申請が必要なことに変更はないため、特に、数多くの従来型欧州特許を保有する特許権者にとっては、欧州における特許ポートフォリオの確認とあわせて、諸費用に係る費用対効果を考慮しつつオプト・アウトの要否を検討する必要があるものと考えられる。

【出典】
欧州特許庁「Blog: Italy considers joining the unitary patent」(2015年5月22日付け)
欧州統一特許裁判所「UPC Court Fees and Recoverable Costs」(2016年2月26日付け)

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