日本では、2003年に一旦廃止された後、平成26年法改正により創設され、2015年4月1日に施行された特許異議申立ですが、名称は同じでも、下表に示すように欧州特許条約の異議申立(Opposition)とは相違する点があります。

欧州 日本
手続 当事者系 査定系
申立人適格 何人も可
(匿名不可)
何人も可
(匿名不可)
申立期間 欧州特許の付与の公告から
9か月以内
特許掲載公報発行の日から
6か月以内
審理方式 原則書面審理
(請求又は職権により、口頭審理可
※実際には、口頭審理が実施されることが多い
書面審理
口頭審理は不可
審理主体 異議部による取扱いで3人の合議体
※合議体の3人は技術系審査官から選ばれるが、うち1人は出願審査を担当した審査官になることがある
3人又は5人の審判官からなる合議体
不服申立て 不利な決定を受けた当事者は、相手方を他方の当事者として、審判部に審判請求が可能 取消決定の場合に、特許権者は特許庁長官を被告として知財高裁に出訴が可能
庁費用 775ユーロ
※785ユーロ(2016年4月施行の料金改定後
16,500円+(請求項の数×2,400円)

他にも、欧州特許条約の異議申立に関して、知っておきたい実務的な留意点としては次の事項を挙げることができます。

  • クレームの明確性要件(84条)異議理由ではない。ただし、異議申立の手続において補正されたクレームについては、明確性要件も審理されうる(2015年3月24日の拡大審判部によるG3/14の審決で明確化)
  •  審査段階で追加された新規事項を削除する補正が保護の拡張に該当する場合、そのような補正は認められない(いわゆる「inescapable trap」:123条(2)及び(3)
  • 特許権者は、複数の補正クレームのセット(主請求(main request)と1つ以上の副請求(auxiliary request))を審理対象にすることが可能

このような特徴を有する欧州の異議申立制度ですが、欧州特許庁の2014年年次報告書(Annual Report 2014)では、異議申立に関する統計データは次の通りとなっています。

  • 維持決定                                        : 31%
  • 補正(訂正)された形での維持決定   : 38%
  • 取消決定                                        : 31%

日本の異議申立はどのような傾向が出るのか、今後が注目されます。

【参考】
日本特許庁「特許異議の申立て
欧州特許庁「The opposition procedure」、「Guidelines for Examination
ジェトロ・欧州知的財産ニュース「欧州特許庁拡大審判部,異議申立手続において補正された特許のクレームの明確性に関する審査の可否について審決

***追記(2016年3月9日)***
~2016年4月1日施行の欧州特許庁料金改定について~
欧州特許庁は「Official Journal January 2016」にて、出願関係を含む一部の料金を2016年4月1日から1~2%程度引き上げることを発表しました。料金改定の対象には異議申立も含まれており、上表にあるとおり、改定後の庁費用は785ユーロとなります。

【出典】
欧州特許庁「Decision of the Administrative Council of 16 December 2015 amending Article 2 of the Rules relating to Fees and adjusting the amount of the reduction in the fee for the supplementary European search where the international or supplementary international search report was drawn up by one of the European International Searching Authorities (CA/D 12/15)

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