欧州特許出願では、審査部が特許付与の意図(許可予告または規則71(3)の通知とも呼ばれる)を出願人に通知すると、出願人はその通知から4か月以内に所定の費用を納付し、手続言語以外の二つの公用語に翻訳したクレームを提出する(規則71(3))。また、出願人はその期間内に、特許付与されるテキストに対して補正または訂正(以下「補正等」という。)を求めることができ、審査部は、その補正等を認めれば規則71(3)に基づく通知を再発行し、認めなければ審査を再開する(規則71(6))。

2015年7月1日より、出願人は、規則71(3)に基づく通知の再発行を受ける権利を放棄すること(waiver)が可能になった。この権利放棄を求めるためには、出願人はその4か月の期間内に以下の手続を行う必要がある。

  • 規則71(3)に基づく通知の再発行を受ける権利の放棄を明示
  • 手続言語以外の二つの公用語によるクレームの翻訳を提出(手続言語が英語の場合、ドイツ語及びフランス語)
  • 登録および公告料(fee for grant and publishing)を納付
  • 16項目以降のクレーム料を納付(未納付の場合のみ)
  • 補正等の特定

この求めに応じて審査部がその補正等を認めれば、規則71(3) に基づく通知が再発行されることなく登録手続がなされる。もし補正等が認められない場合には、審査部は規則71(3)に基づく通知を再発行するか、あるいは審査を再開する。

規則71(3)に基づく通知は、形式的事項に関する審査官補正案を伴うことが多く、また、特許発行前に書誌事項、明細書及びクレームを確認する実質的に最後の機会である。従前は、通知受領後に発見した明らかな誤記の修正であっても、規則71(3)に基づく通知の再発行を経る必要があったが、権利放棄(waiver)を選択することで早期の登録が期待できる。

ただし、今回の規則改正に関する通知において欧州特許庁(EPO)が注意喚起しているように、EPO拡大審判部はG 1/10(2012年7月23日)の審決において、いったん登録されると、規則140に基づく「誤りの訂正」を根拠とする誤記の訂正は許容されないと判示している(注:クレームの減縮および取消については、欧州特許条約105a~105c条に基づく請求が可能である)。そのため、補正等の箇所が多かったり重要な部分に関するものであったりする場合には、規則71(3)に基づく通知の再発行を受ける権利を留保した方がよいであろう。

【出典】
欧州特許庁「Notice from the European Patent Office dated 8 June 2015 concerning the possibility to waive the right to a further communication under Rule 71(3) EPC

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