2015年は各法域で新たな制度の運用が開始されたため、その利用の動向が気になるところであると考えられる。そこで、3つの新制度について利用状況等を総括する。

1.特許:異議申立制度
(※特許異議申立の統計に関する続報はこちら
2015年4月1日に施行された特許異議申立ては、11月25日までの申立ての合計が236件となったことが公表された。IPC別の内訳ではAセクション(生活必需品)が70件と最も多くなっている。また、2015年10月21日現在からの増加分は、Cセクション(化学;冶金)が42件と最も多かった。

IPC 2015年10月21日現在 申立日が2015年11月25日まで
(+35日間)
申立日が2016年1月12日まで
(+48日間)
申立日が2016年3月8日まで
(+56日間)
Aセクション
(生活必需品)
41 70 (+29) 105 (+35) 139 (+34)
Bセクション
(処理操作;運輸)
21 38 (+17) 65 (+27) 93 (+28)
Cセクション
(化学;冶金)
26 68 (+42) 117 (+49) 189 (+72)
Dセクション
(繊維;紙)
4 7 (+3) 11 (+4) 19 (+8)
Eセクション
(固定構造物)
4 6 (+2) 10 (+4) 18 (+8)
Fセクション
(機械工学;照明;加熱;武器;爆破)
3 9 (+6) 20 (+11) 30 (+10)
Gセクション
(物理学)
8 15 (+7) 28 (+13) 51 (+23)
Hセクション
(電気)
12 23 (+11) 49 (+26) 69 (+20)
合計 119 236 (+117) 405 (+169) 608 (+203)

※括弧内は、直前のデ-タからの増加分
(注)「2015年10月21日現在」は申立日ベースか否かは不明

2015年11月25日までの申立件数である236件は、同年4月1日に公報が発行された特許の異議申立期間が満了した10月1日から55日経過後の総数となる。この申立件数は、2014年通年における無効審判の請求件数である215件をすでに上回っている。

なお、仮に、この236件の申立て全てが特許異議申立期間(特許掲載公報発行から6か月)の満了日直前にされたものであり、かつ、複数申立てがなかったとすると、4月1日~5月27日(11月25日の約6か月前)に発行された特許公報は35,412件であるため、わずか0.67%にすぎない。同様の仮定に基づいて旧異議申立制度の最終年である2003年の申立て総数3,986件を55日分に換算すると約600件であり、新制度下での申立件数は旧制度下と比べて4割以下に留まっていると推測される。

さらに欧州の異議申立と比較すると、欧州では2014年に特許されたもののうち4.7%に対して異議申立てがされており、これと比べても日本の新制度下での申立件数は少ないといえる。

2.意匠:ハーグ協定に基づく国際意匠登録出願
2015年5月13日より意匠の国際意匠登録出願が可能となり、この制度を利用することで複数国・複数意匠についての出願手続を一括で行える等のメリットが得られるとされている。

しかしながら、2015年5~10月に日本特許庁を本国官庁とした間接出願の件数はまだ合計で10件であり、日本からWIPO国際事務局に直接出願された出願のうちすでに所定期間(6か月)の経過または請求により国際公表された件数についても、16件(2015年12月28日時点)に留まっている。

なお、国際公表があった16件における指定国は米国6件、欧州14件、韓国7件となっている(中国はハーグ協定に未加盟)。日本の出願人による2010~2014年の米国、欧州、韓国への意匠登録出願件数は下表の通りであり、これらの件数と比較すると、意匠の国際登録出願の利用は現在のところ静かなスタートといえる。

<日本の出願人による米・欧・韓への意匠登録出願>
201512-1

WIPOが発行しているHague Yearly Report 2015によれば、国際意匠登録出願の件数は下表の通りであり、意匠数は増加している。今後の日本の出願人による国際意匠登録出願の動向が注目される。

<2014年の国際意匠登録出願の利用状況>
201512-2

3.商標:新しいタイプの商標
(※新しいタイプの商標の統計に関する続報はこちら
2015年4月1日から、音商標、動き商標などの新しいタイプの商標の出願受付が開始され、初日には、合計481件、2015年10月23日までの出願総数は1,039件(暫定)であったことが公表された。

また、新しいタイプの商標の登録査定の件数も公表されたが、出願件数の最も多かった色彩のみからなる商標(出願総数423件)について登録査定となったものはなかった。

2015年4月1日に出願された色彩のみからなる商標の経過情報(J-PlatPat)によれば、上申書、刊行物等提出といった、出願人あるいは第三者からのアクションは一部で見受けられたものの、特許庁からの拒絶理由通知が発送された記録は確認できなかった(2015年11月26日時点)。特許行政年次報告書2015年版によれば、2014年の商標審査において一次審査通知までの平均期間は4.1か月であるがすでに約8か月と2倍近い期間が経過している。

これについて、特許庁の公報紙によれば「色彩の独占はブランドとしての強い効果が生じる一方、他人の色彩選択の自由を狭めることにもなります。」として識別性獲得の有無を含め、慎重に審査が行われているとしている。2016年1月初め頃までには拒絶理由通知の発送が始まった模様であり、特許庁の今後の判断が注目される。

<新しいタイプの商標の登録査定の内訳>
201512-3

【出典1】特許庁「特許異議の申立ての状況、手続の留意点について
【出典2】特許庁「産業財産権制度125周年記念誌
【出典3】欧州特許庁「Annual Report 2014: Searches, examinations, oppositions
【出典4】特許庁「特許出願等統計速報(平成27年11月24日作成)
【出典5】世界知的所有権機関(WIPO)「Hague Express Database
【出典6】世界知的所有権機関(WIPO)「Hague Yearly Report 2015
【出典7】特許庁「新しいタイプの商標について初めての審査結果を公表します
【出典8】特許庁「公報紙・とっきょvol.25

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※【NOTE】の記事で紹介している米国特許商標庁「Patent Review Processing System(PRPS)」は、「Patent Trial and Appeal Board End to End (PTAB E2E)」へ移行されました(ただし、Derivation手続を除く)。

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知財トピックス(日本情報)特許異議申立制度の利用状況に関する分析(2016年秋版:その1) 2016-09-06
知財トピックス(日本情報)特許異議申立制度の利用状況に関する分析(2016年秋版:その2) 2016-11-14

***追記(2016年1月27日)***
特許異議の申立ての状況(申立日が平成28年1月12日までのもの)のデータを追加。

***追記(2016年3月23日)***
特許異議の申立ての状況(申立日が平成28年3月8日までのもの)のデータを追加。

なお、今回の更新では現在の状況として次の説明が付されている。
「特許異議の申立ての件数が、以下のとおり600件を超えました。本案審理は順次進められており、取消理由通知(決定の予告)がされたもの、取消理由通知に応答がなく取消決定がされたものもあります。」

※この記事は一般的な情報、執筆者個人の見解等の提供を目的とするものであり、創英国際特許法律事務所としての法的アドバイス又は公式見解ではありません。