既報の「PACE(早期審査プログラム)」の見直しとあわせて、欧州特許庁(EPO)は、官報(Official Journal)2015年11月号にてPACE以外の審査早期化の手段として次の4つを紹介している。

A. 規則70(2)の通知を受ける権利の放棄
規則70(2)の通知とは、サーチレポートの発送前に出願人が審査請求した場合に発行される通知である。原則として、出願人はこの通知から6か月以内に審査継続の意思を示す必要がある(多くの場合、サーチレポートへの応答も同時に行うことになる)。

出願人はこの通知を受ける権利を放棄することができる。放棄した場合には、サーチレポートは最初のオフィスアクションの中で示されることになるが、これにより応答の機会が事実上一つ減る可能性があることに留意する必要がある。

B. 規則161/162の通知を受ける権利の放棄
規則161/162の通知とは、Euro-PCT出願(PCTの欧州域内移行出願)において当該通知から6か月を期限として出願人に自発補正の機会を与えると共に、必要なクレーム手数料の支払いを求める通知である。

出願人がこの通知を受ける権利を放棄することで、欧州特許庁は当該通知を行うことなく、サーチレポートの作成へと手続きを進める。これにより、自発補正のための6か月という期間をスキップする分だけ、審査を促進させることができる。この放棄は、欧州域内移行後の自発補正の要否との比較衡量で決めることになるであろう。

C. 規則71(3)の通知の再発行を受ける権利の放棄
規則71(3)の通知とは、審査部の特許付与の意図を示す通知である。出願人はその通知から4か月以内に、特許付与されるテキストに対して補正または訂正を求めることができ、審査部は、その補正等を認めれば規則71(3)の通知を再発行する。

出願人は、その再発行を受ける権利を放棄することができる。この権利を放棄した場合には、審査部はその補正等を認めると規則71(3)の通知を再発行することなく登録手続を進める。ただし、いったん登録されると誤記であっても訂正が困難になる点には留意する必要がある(関連記事「規則71(3)の改正によるWaiver」参照)。

D. PCT出願の早期移行
EPOは31か月の移行期間が過ぎるまでは移行されたEuro-PCT出願を処理しないのが原則である。出願人は、移行期間内に行うべき手続き(手数料の支払い、翻訳文の提出など)をすべて行った上で早期処理について明示の請求をすることで、移行期間経過前であっても処理を開始するようEPOに求めることができる。

なお、早期処理とあわせてPACEを希望する場合、PACEの申請だけで両方が認められるわけではなく、早期処理に関する明示の請求が別途必要である点に留意する必要がある。

【出典】
欧州特許庁「Notice from the European Patent Office dated 30 November 2015 concerning ways to expedite the European grant procedure

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