Bilski v. Kappos事件(2010年6月)、Mayo v. Prometheus事件(2012年3月)、AMP v. Myriad 事件(2013年6月)及びAlice v. CLS Bank事件(2014年6月)と4年間で4件の米国連邦最高裁判所による判決が下されたことから明らかなように、主にソフトウエア・ビジネスモデル関連、治療・診断方法関連、遺伝子関連及び自然物関連の発明について、米国では特許法101条(特許適格性 ; 保護適格性)が大きな問題となっている。

特に、本稿執筆時点(2016年5月末)において、2014年6月以降、連邦巡回控訴裁判所(CAFC)において法101条が争点となった事件で特許有効の判断が示されたものは、下記の2件のみであることは現状の厳しさを表している(その後の状況に関する続報はこちらこちら)。

  • ウェブ関連技術の特許が対象であったDDR Holidings v. Hotels.com 事件(2014年12月5日判決
  • コンピュータメモリのためのデータ記憶及び検索システムに関する特許が対象であったEnfish v. Microsoft事件(2016年5月12日判決

現在、法101条の適用に際しては、上記の最高裁判決のうち、Mayo事件及びAlice事件で示された規範が軸となっており、その2ステップからなる判断手法は「Mayoテスト(又はMayo/Aliceテスト)」と呼ばれ、直近のCAFC判決でも用いられている(例:カードゲームに関するIn re: Smith事件(2016年3月10日判決)、遺伝子関連技術に関するGenetic Technologies v. Merial事件(2016年4月8日判決)、髪のカット方法に関するIn re: Brown事件(2016年4月22日判決)、デジタル画像の記録及び管理等に関するTLI Communications v. A.V. Automotive事件(2016年5月17日判決))。

このような法101条の現状に対しては批判も多く、元USPTO長官であるKappos氏は、2016年4月にCAFC主催で開催された「2016 Judicial Conference」において法101条の廃止を求めたと伝えられている。

また、連邦最高裁が法101条に関して更なる規範を示すことを期待する声もあるが、Alice最高裁判決以降、これまでのところ法101条が争点になった事件で連邦最高裁への上告が受理されたものはない。しかしながら、妊婦の血液から胎児由来の父系遺伝核酸(DNA)を検出する方法に関するSequenom v. Ariosa Diagnostics事件(2015年6月12日CAFCパネル判決同年12月2日に大法廷(en banc)で審理しない旨の決定)が上告されており、自然法則の発見と特許適格性との関係についての問いが上告理由に含まれていることから、連邦最高裁が受理するか否かが注目されている(連邦最高裁ウェブサイトに掲載されている最新の状況はこちら ※追記:6月27日、連邦最高裁は上告を審理しない旨の決定を下した)。

一方、米国特許商標庁(USPTO)は、下記出典において、2015年7月の「July 2015 Update on Subject Matter Eligibility」に続くアップデートとして、「May 2016 Subject Matter Eligibility Update」を公表した。ブログ「Director′s Forum」の 2016年5月5日付け記事で紹介されている通り、今回のアップデートには次の事項が含まれている。

また、アップデート公表後にあったCAFC判決2件(上述のCAFC判決のうち、抽象的アイデアではないとして特許適格性を認めたEnfish判決、及び、Enfish判決を引用しつつ抽象的アイデアであるとして特許適格性を認めなかったTLI Communications判決)を受けて、追加のメモランダムも公表された。

なお、「May 2016 Subject Matter Eligibility Update」及び追加のメモランダムのいずれも、下記出典において、従前のガイダンスに追記する形で公表されている。

【出典】
米国特許商標庁 「2014 Interim Guidance on Subject Matter Eligibility

【参考】
拙稿「ソフトウエア関連発明に関する特許適格性と進歩性との交錯の可能性 ─Alice最高裁判決後における米国の現状に対する考察(日本弁理士会・別冊パテント 第15号, 2016年)」

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