2016年5月9日、内閣の知的財産戦略本部は「知的財産推進計画 2016」を決定した。同計画では下表に示す事項が挙げられており、同日に行われた内閣官房長官の記者会見によれば、「ビッグデータ、人工知能などに対応した著作権システムの構築、知財教育の推進、コンテンツとものづくり・食・観光など他の分野との連携促進、さらに、知財紛争処理システムの機能強化を盛り込んでおり、施策の具体化に努めていく」とされている。

  • 第1.第4次産業革命時代の知財イノベーションの推進
    1.デジタル・ネットワーク化に対応した次世代知財システムの構築
    2.オープン・イノベーションに向けた知財マネジメントの推進
  • 第2.知財意識・知財活動の普及・浸透
    1.知財教育・知財人材育成の充実
    2.地方、中小企業、農林水産分野等における知財戦略の推進
  • 第3.コンテンツの新規展開の推進
    1.コンテンツ海外展開・産業基盤の強化
    2.アーカイブの利活用の促進
  • 第4.知財システムの基盤整備
    1.知財紛争処理システムの機能強化
    2.世界をリードする審査の実現によるグローバル事業展開支援の強化

このうち、「第4.1. 知財紛争処理システムの機能強化」に関しては、「今後取り組むべき施策」の項目において次の(1)~(4)が挙げられている。

(1)適切かつ公平な証拠収集手続の実現
(2)ビジネスの実態やニーズを反映した適切な損害賠償額の実現
(3)権利付与から紛争処理プロセスを通じての権利の安定性の向上
(4)知財紛争処理システムの一層の機能強化に向けた更なる検討

これを受けて、6月8日に特許庁で開催された「産業構造審議会 知的財産分科会 第14回特許制度小委員会」では、各施策の検討状況が説明された。その中でも、「知的財産推進計画 2016」の工程表において「2016年度中に法制度の在り方に関する一定の結論を得る」として短期的な検討事項とされている下記については、今後具体的な検討が行われるものと考えられる。

  • (1)について
    ○訴え提起後の証拠収集手続に関して、現行の書類提出命令を発令しやすくするよう、具体的態様の明示義務が十分に履行されなかった場合に同命令が発令されやすくする方策や同命令と秘密保持命令を組み合わせて発令できるようにすること
    ○中立的な第三者が被疑侵害者に対して査察を行う制度(提訴後査察)
  • (2)について
    ○現行特許法第102条第3項に関して、通常の実施料相当額を上回る損害額の算定がより容易にできるようにするための考慮要素の明確化
  • (3)について
    ○専門官庁によるレビュー機会の拡大としての侵害訴訟における特許庁に対する求意見制度
    ○権利の逐次安定化を図るための特許庁における有効性確認手続、侵害訴訟における訂正審判請求等を要件としない訂正の再抗弁
    ○侵害訴訟等において権利の有効性が推定されることを確認的に規定するための明らか要件の導入の是非及び訂正審判等の要件緩和等の是非等

【出典】
首相官邸・知的財産戦略本部知的財産推進計画2016
特許庁「産業構造審議会知的財産分科会特許制度小委員会 第14回議事要旨配付資料

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