2016年4月1日に施行された、中国最高人民法院の司法解釈「専利権侵害をめぐる紛争案件の審理における法律適用の若干問題に関する解釈(二)」の14条に興味深い記載がある。日本語参考訳を以下に紹介する。

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第14条 人民法院は一般消費者が意匠について有する知識水準、認知能力を認定するとき、通常、被疑侵害行為が発生したときに権利を付与された意匠が属する同一又は類似の種類の製品の設計領域を考慮しなければならない。人民法院は設計領域が比較的大きい場合、一般消費者は登録意匠と侵害被疑意匠との微細な違いは通常は認識しないものであると認定することができる。また、設計領域が比較的小さい場合には、一般消費者は登録意匠と侵害被疑意匠との微細な違いを認識する可能性が高いと認定することができる。
※原文を参照しつつ、日本貿易振興機構(ジェトロ)提供の日本語訳仮訳を一部修正
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この「設計領域」という文言についてはこれ以上の定義は記載されていないが、「意匠創作の自由度」と言い換えることができると考える。つまり、その意匠を創作するに当たり、例えば機能的な理由などから創作の自由度が狭い(形状選択の幅が狭い)場合には、登録意匠と侵害被疑意匠の細かい部分における差異点が類否判断に影響を与える(この場合、非類似になる)可能性が高くなるということだろう。

この14条を見てすぐに思い浮かぶのが、欧州共同体意匠制度における「the degree of freedom of the designer」である。これは、欧州理事会規則6条(2)や10条(2)に規定されているものであり、意匠の有効性判断と権利範囲判断の両方の場面で適用される概念である(権利範囲についての条文が10条(2))。実際の侵害裁判事件でも、freedom of the designerは検討されており、また、有効性判断の事件であるが、このfreedom of the designerは、「製品の技術的な機能」、「その製品に共通している特徴を組み込む必要性」、「経済的理由(例えば、安価にする必要性)」によって制約されるものであると判示したものがある。

一方、意匠の全体観察に当たり、意匠に係る物品の性質、用途、使用態様や、公知意匠の内容を総合的に加味して意匠の要部を認定し、要部が共通するか否かで侵害の成否を判断する日本の意匠権侵害事件においては、直接的には創作の自由度という概念自体は出てこない。

いずれにせよ、中国における「設計領域」の概念が、今後どのように判断されていくのか、興味深く見守る必要がある。

【出典】
中华人民共和国最高人民法院「最高人民法院关于审理侵犯专利权纠纷案件应用法律若干问题的解释(二)

【参考】
ジェトロ「法令・法規 – 知的財産に関する情報 – 中国法律・法規-司法解釈 最高人民法院による専利権侵害をめぐる紛争案件の審理における法律適用の若干問題に関する解釈(二)(日本語仮訳原文)」
欧州連合知的財産庁(EUIPO)「Community design legal texts
特許庁「外国産業財産権制度情報意匠理事会規則(日本語仮訳)

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