旧法(Law No. 14 of 2001)における規定の大幅な変更を含む改正インドネシア特許法(Law No. 13 of 2016)が施行された。原則として2016年8月26日以降の出願に適用されるが、経過措置も規定されている。概要は下記の通り。

・コンピュータプログラムの特許適格性容認
技術的効果を奏するコンピュータプログラムについては特許適格性が認められることとなった。

・いわゆる「第二医薬用途」を特許対象から原則除外
効能に関して有意な改善がない場合、既知の物の新たな使用又は既存の化合物の新たな形態について特許は許可されないこととなった。

・小特許(実用新案に相当する制度)の保護範囲拡大
物に加えて、新規な方法及び既存の方法の改良が保護対象に追加された。

・審査期間の短縮
特許については審査請求日または公開期間の終了日のいずれか遅い方から36か月を「30か月」に、小特許については出願日から24か月を「12か月」に、それぞれ法上の審査期間が短縮された。
(※初出時は審査請求期限としておりましたが、正しくは審査期間です。お詫びの上、訂正いたします。)

・特許年金の納付時期変更
最初の年金については、特許証の発行日から6か月以内の納付が必要となった。
(※初出時は許可通知の日としておりましたが、正しくは特許証の発行日です。お詫びの上、訂正いたします。)

また、旧法では期限後であっても追加手数料の支払いを条件として納付が可能であったが、新法では納付期限日(出願日起算で、各年における出願日と同じ日の1か月前)までに年金を支払わなかった場合、特許は取り消される(ただし、期限7日前までの申請により12か月までの延長が可能)。これにより、特許年金未払いを放置した場合に生じうる問題(※下記の【参考】参照)が解消される。

・付与後異議申立の導入
審判委員会の権限拡大に伴い、付与前異議申立に加えて、付与後異議申立の制度が利用可能となった。

さらに、下記事項に関する改正も施行されている。

  • 明細書の記載要件
  • 所有権に関する声明(statement of ownership)の提出
  • 特許権者の実施義務
  • 強制実施権の拡大
  • 職務発明の対価
  • 電子出願の導入

このように、実務において注意すべき点が多い改正となっているが、上述のように特許年金に関する改正をはじめとして、経過措置及び運用の詳細について明確な情報が得られていない点も残されている。

【出典】
インドネシア知的財産総局(DGIP)「Peraturan Perundang-undangan Terkait Paten (Legislation Related Patents)」
・UU Nomor 13 Tahun 2016 tentang Paten (Law No. 13 of 2016 on Patents) ※改正法条文
・Surat Edaran Nomor : HKI-3-08.OT.02.02 Tahun 2016 Tentang Masa Peralihan Pembayaran Biaya Tahunan Undang-Undang Paten Nomor 14 Tahun 2001 ke Undang-Undang Paten Nomor 13 Tahun 2016 (Circular Number: HKI-3-08.OT.02.02 2016 About Transitional Payment of Annual Fee Patent Law No. 14 of 2001 to the Patents Act No. 13 of 2016) ※下記追記での「説明(circular)」
特許庁委託事業「日インドネシア知財フォーラム」(2016年10月24日開催)

【参考】
ジェトロ「インドネシア:法令等」※特許法(2016)を含む
日本特許庁「外国産業財産権制度情報インドネシア特許法(旧法の日本語仮訳)」 ※特許年金については、特に88条及び115条(1)
(特許庁委託事業)外国産業財産権侵害対策等支援事業 外国産業財産権制度相談 事例 QA集インドネシアで登録済の特許について、権利を放棄したいと考えているのですが、権利を放棄する手続をインドネシア特許庁に行わなければ、所定の維持年金と追加手数料が請求されると連絡がありました。この手続について教えて下さい。」 ※旧法下での特許年金について

***追記(2016年10月17日、18日)***
実際の施行日は8月28日ではなく8月26日であったこと、及び、特許年金の取扱いに関する説明(circular)があったことにあわせて、タイトル及び一部の説明を変更。

***追記(2016年10月24日)***
審査期間および特許年金の納付時期に関する誤りを訂正。

***追記(2016年10月28日)***
改正法条文およびCircularへのリンクを追加

***追記(2016年11月21日、22日)***
本文における「特許年金の納付時期変更」の項及び追記での説明を、下記の経過措置に関する説明にあわせて一部変更。

現時点でDGIPのウェブサイトでは英語での説明は見受けられないが、複数の現地代理人からの情報によれば、追記(2016年10月17日、18日)での「特許年金の取扱いに関する説明(circular)」における経過措置は下記のとおりである。

(1)未払いである特許年金の納付期限が改正法施行日(2016年8月26日)より前の場合、旧法における手続き及び計算方法を適用する
(2)未払いである特許年金の納付期限が改正法施行日(2016年8月26日)以降の場合、新法における手続き及び計算方法を適用する
(3)納付期限が改正法施行日(2016年8月26日)から2016年12月30日までの場合、2016年12月30日までに納付が可能
(4)上記(3)について、納付しなかった場合、特許は取消

上記(3)に該当する案件には、2016~2017年度分の納付が必要となる場合や、旧法下での未払い分の考慮が必要となる場合等があると考えられる。そのため、新法では最初の年金を除いて納付期限が出願日起算(具体的には、本文中のとおり「各年における出願日と同じ日の1か月前」)に変更されていることとあわせて、2016年12月30日までに必要な納付については十分な留意が求められる。

【関連記事】
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***追記(2017年5月10日)***
【参考】にジェトロによる改正法日本語仮訳へのリンクを追加
インドネシア知的財産総局(DGIP)のウェブサイトリニューアルによりリンク切れとなったため、【出典】の改正法条文及びCircularのリンクを削除

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