Halo Electronics. Inc. v. Pulse Electronics, Inc. (Fed. Cir. 2016) Nos. 2013-1472, 2013-1656
WBIP LLC v. Kohler Co. (Fed. Cir. 2016) Nos. 2015-1038, 2015-1044
Innovention Toys, LLC v. MGA Entertainment, Inc. (Fed. Cir. 2016) No. 2015-1038
Stryker Corporation v. Zimmer, Inc. (Fed. Cir. 2016) No. 2013-1668
WesternGeco LLC v. ION Geophysical Corp. (Fed. Cir. 2016) No. 2014-1528
Apple Inc. v. Samsung Electronics Co., Ltd. (Fed Circ. en banc 2016) Nos. 2015-1171, 2015-1195, 2015-1994

故意侵害(willful infringement)に関する判断が争点であったHalo Electronics v. Pulse Electronics 及びStryker v. Zimmerの最高裁判決(以下、単に「Halo最高裁判決」という)が2016年6月13日に下され、客観的要件及び主観的要件による従前の「2段階テスト(Seagateテスト)」は柔軟性に欠くとして否定された。これにより、米国特許法284条の適用における損害賠償額の増額(enhanced damage;treble damage(三倍賠償)とも呼ばれる)に関して、「甚だしいケース(egregious cases)」に限られるとされつつも、連邦地方裁判所による裁量の幅が広がることとなった。また、故意侵害の立証基準が「明白かつ説得力のある(clear and convincing)」から「証拠の優越(preponderance of evidence)」に引き下げられたため、特許権者による故意侵害の立証は従前よりも容易になったと考えられる。

この最高裁判決の後、Halo Electronics v. Pulse Electronics事件については、2016年8月5日、連邦巡回控訴裁判所(CAFC)での差戻審において、連邦地裁による損害賠償額を増額しない旨の判断がSeagateテストを適用したものであったことを理由として、連邦地裁へ差し戻されることとなった。なお、今回の差戻審での判決理由によれば、当初の連邦地裁の段階において陪審は被告Pulse社による侵害が故意であった可能性が極めて高いと判断していたとあることから、損害賠償額の増額に関して、再度の連邦地裁による判断がどのようなものになるかが注目される。

Halo Electronics v. Pulse Electronics事件以外についても、CAFCは故意侵害に関する判断を含む判決を下している。1つは、7月19日の WBIP v. Kohler事件に対するCAFC判決である。本判決では、Halo最高裁判決での判断に沿って、被告Kohler社の故意侵害による損害賠償額の増額について連邦地裁は裁量を濫用していないとCAFCは判断した。

また、非先例(nonprecedential)とされているが、8月5日、CAFCはInnovention Toys v. MGA Entertainment事件を連邦地裁へ差し戻している。本事件では、連邦地裁の段階において陪審が「明白かつ説得力のある」の基準で主観的な故意を認定しており、侵害時において、損害賠償額の増額を認容する「甚だしいケース」であったか否かを判断するように連邦地裁に求めている。

さらに、Halo最高裁判決により差し戻されたStryker v. Zimmer事件では9月12日に損害賠償に関する判断を無効とし、WesternGeco v. ION Geophysical事件では9月21日に故意侵害に関する判断を無効として、CAFCは両件を連邦地裁へ差し戻した。10月7日にはCAFCの大法廷(en banc)が判断したApple v. Samsung事件においても、故意侵害に関する争点は同じく連邦地裁へ差し戻しとなった。

このように、Halo最高裁判決から3~4か月ほどの間でCAFCが複数の事件を連邦地裁へ差し戻していることから、Seagateテストが否定され、連邦地裁による裁量の幅が広がった影響が小さくないことは明らかである。現時点では具体的な影響の大きさを推し量るには時期尚早であるが、今後は、陪審による故意侵害の認定とあわせて「甚だしいケース」か否かに関して連邦地裁でどのように判断されるかが、損害賠償額の増額(三倍賠償)の認定におけるキーポイントになるものと考えられる。

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