(※2017年春時点の統計データのほか、異議の申立てがされる特許の傾向についても分析した続報はこちら

その1」及び「その2」で取り上げた特許異議申立の件数及び決定に関する統計に続き、本稿では審理状況の詳細に関する分析を試みる。

今回の分析対象及び条件は、下記のとおり。
・調査対象:申立日が2015年4月1日から2016年3月31日までの634件(件数は権利単位)
・使用データベース:NRIサイバーパテントデスク2(経過情報ダウンロード日:2016年10月20日)

まず、公報発行から申立日までの平均日数は表1に示されるとおり170日前後であった。つまり、申立期間の満了直前での申立が多く、「その1」で示した件数推移において、異議申立の件数が2015年10月(施行の6か月後)から増加したことと対応している。

<表1:公報発行から申立日までの日数>
201611-07

次に、経過情報ダウンロード日時点での審理状況を表2に示す。「その2」では、出典1より、2016年6月末時点の実績として、申立後のファーストアクションのうち71.2%で取消理由通知があったとの統計を引用したが、今回の調査対象については69.6%と同様の結果となった。また、審理中案件が全体の38.8%と高い割合を占めており、その中で取消理由通知があったものは97.2%と大部分を占めている。

<表2:調査対象案件の審理状況>
201611-05※( )内は調査対象634件に対する割合
※[ ]内は各状況の全件数に対する割合であり、複数に該当する場合がある

一方、表3から、取消及び一部取消の割合(合算で7.8%)は、「その1」及び「その2」で紹介したJ-PlatPat「審決速報」を用いた検索結果での取消及び一部取消の割合(合算で10~16%)よりも低くなっていることがわかる。しかしながら、上述のとおり、審理中案件が全体の38.8%と高い割合を占めており、その中で取消理由通知があったものは97.2%と大部分を占めているため、今後、今回の調査対象において取消及び一部取消の割合が上昇し、J-PlatPat「審決速報」での検索結果に近づいていくと推測される。

<表3:「決定あり」の内訳>
201611-06※( )及び[ ]の使い分けは、表2と同様
※維持決定で「取消理由通知なし」の件に限った場合、申立日から決定等までの平均日数は107日

表3に示されている取消及び一部取消の割合が、今後、J-PlatPat「審決速報」での検索結果に近づいていく可能性は、申立日から決定までの平均日数からも推測できる。同表の取消又は一部取消の計30件において、申立日から決定までの平均日数は、それぞれ225日と271日であり、範囲は約半年~1年弱に収まっている。いわば「難件」の多くは審理中であり、特許異議申立の審理結果について全般的な傾向を分析するにはもうしばらくの時間を要するものと思われる。

このような現況を考慮しても、表2からわかるように訂正請求が調査対象全体の51.7%においてなされており、審理中案件に限った場合には78.9%まで割合が上昇する点は特筆されるべきである。「その2」でも述べたとおり、取消理由通知の割合(ファーストアクションの実績)と取消率との間にはギャップが存在するが、訂正請求の後に維持決定となった案件には、請求項が十分に減縮されたこと、又は、請求項が削除されたことにより、申立人にとっては所期の目的を達成できた場合も少なくないと考えられる。また、表3における申立却下には、訂正請求により対象となる請求項が削除された場合が含まれるため、そのような場合については実質的には申立人にとって有利な結果と評価できる。

したがって、異議申立の活用を検討する際には、維持、申立却下、取消又は一部取消との結論の種別だけでなく、最終的には維持決定になるとしても、効果的な申立ての理由により特許権者が訂正請求を避けられない状況を如何に作り出すかという観点も重要と言えよう。

【出典】
特許庁「特許異議の申立ての件数が1000件を超えました」 ※2016年8月5日更新(現在は削除されている)
特許庁「特許出願等統計速報

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