イギリス(英国)が欧州統一特許裁判所協定(UPC協定)に批准する意向であるとのプレスリリースが、英国知的財産庁のウェブサイトにて2016年11月28日付けで公表された。離脱に向けたEUとの交渉はまだ開始されていないが、この意向表明により、欧州単一特許・統一特許裁判所については準備が最終段階に向かい、2017年後半に制度が開始されるとの予想が出始めている。

なお、今回のプレスリリースでは、EUとの今後の交渉における英国の目的又は立場を先取りするものではないとの言及がある。これは、英国が、EU離脱にあわせてUPC協定を破棄するのか、または、EU離脱後もUPC協定に留まるかは、EUとの交渉結果次第になることを示唆するものと推察される。

UPC協定の発効には、英国、ドイツ及びフランスを含むEU13か国の批准が必要である。これに関して、欧州特許庁のウェブサイトでは、英国の意向表明を歓迎する趣旨の長官コメントを11月29日付けで公表するとともに、現在、英国のほかに、ドイツ、イタリア、スロベニア及びリトアニアの計5か国においても批准の準備が進んでいると伝えている。これらの5か国すべてが手続きを完了すれば、協定の発効要件をクリアするだけでなく、批准国数は16か国となる(批准済みの11か国は、オーストリア、フランス、スウェーデン、ベルギー、デンマーク、マルタ、ルクセンブルク、ポルトガル、フィンランド、ブルガリア、オランダ)。

また、欧州統一特許裁判所は、10月に判事の採用スケジュールを再検討すると発表していたが、ウェブサイトにて11月28日付けで英国が協定に批准する意向を示したことを伝え、早急に運用開始までのロードマップを改訂し公表するとしている。
(※追記:欧州統一特許裁判所は、2017年春(5月)に”Provisional Application Phase(暫定適用フェーズ)”を開始し、2017年12月に運用を開始する前提で準備作業を進めていることが、現地時間の2017年1月16日に同裁判所のウェブサイトで発表された。その後2017年6月末頃までの状況については、【関連記事】参照)

【出典】
英国知的財産庁「UK signals green light to Unified Patent Court Agreement
欧州特許庁「EPO President welcomes UK decision to ratify UPC Agreement
欧州統一特許裁判所「UPC Judicial Recruitment – Update
欧州統一特許裁判所「Update on UPC ratifications – UK signals green light

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***追記(2017年1月16日)***
本文末尾の追記にあわせて、タイトルを変更。

【出典】
欧州統一特許裁判所「UPC – Provisional Application

***追記(2017年4月6日、5月8日)***
下記の関連記事にて欧州単一特許制度に関する基礎的な情報を紹介。また、2017年5月初め頃までの状況を紹介した記事へのリンクを上記【関連記事】に追加。

なお、欧州統一特許裁判所の管轄からの適用除外(オプト・アウト)についての詳細(例えば、オプト・アウトができない場合)、欧州単一特許の取得についての詳細(例えば、現在係属中の欧州特許出願であっても単一特許を選択できない場合)等は、今後、本コーナーにて紹介予定。

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