Samsung Electronics Co., Ltd., et al. v. Apple Inc. (Supreme Court 2016) No. 15-777

米国連邦最高裁判所において、かねてより注目さていた本事件について、2016年12月6日に判決が出された。

本事件の争点は、意匠権侵害における損害賠償額の算定に関する米国特許法289条の「製造物品(article of manufacture)」は、侵害品の製品全体(最終製品)を意味するのか、それとも、例えば登録意匠が製品の一部分のみを権利請求したものであった場合には、対応する構成部品を意味するのかという文言解釈にあった。本事件でのアップル社の登録意匠は以下の通りで、いわゆる全体意匠の権利ではなく、部分意匠の権利となっている。連邦巡回控訴裁判所(CAFC)は前者の解釈を用いてサムスン電子社がスマートフォン(最終製品)を販売して得た利益を損害賠償の額としたが、もし、後者の解釈が採用された場合には、損害賠償額は減額されることになるのである。

D618677号
中央下部の円形ボタンを除く透明な正面視隅丸矩形状の正面パネルを権利化部分としている。
20170119US-1

 

 

 

 

D593087号
正面視隅丸矩形状の枠(ベゼル)と液晶画面、スピーカーを除いた正面パネルを権利化部分としている。
20170119US-2

 

 

 

 

D604305号
様々な色彩を備えたアイコンが碁盤目状に並べられたGUIの意匠登録。
20170119US-3

最高裁判決では、米国特許法289条に基づく損害賠償額は、(1)侵害された意匠が適用された「製造物品」が何であるかを特定し、(2)その「製造物品」から得た侵害者の利益総額を計算する、という2つのステップによって算出されるべきものであると判示した上で、「製造物品」という用語は、最終製品と構成部品の両方の意味を含んでいるとした。そのため、「製造物品」を最終製品に限定した解釈を用いたCAFC判決を破棄し、差し戻した。

2017年1月末時点で、本件はCAFCに係属中であり、今後、損害賠償額の算出が行われることになる。
(追記:2017年2月7日にCAFCは連邦地裁へ差し戻した。APPLE INC. V. SAMSUNG ELECTRONICS CO., LTD. [SCOTUS REMAND OPINION]

なお、最高裁は、「製造物品(article of manufacture)」という用語は、最終製品と構成部品の両方の意味を含んでいるとした理由として、辞書の記載と米国特許法171条等の他の条文における「article of manufacture」の文言との整合性を挙げている。辞書については、確かに「article」という文言を最終製品に限定する記載はないが、かといって米国特許法289条における最高裁の文言解釈を積極的に裏付けるほどのものであるか、疑問がある。また、米国特許法171条における「article of manufacture」についても、確かに意匠登録を受けられる「article」は、いわゆる一般消費者が購入できる最終製品に限定されないため、これとの整合性が取れるもと言えるが、意匠登録の客体の問題と損害賠償額の算定の問題は別問題であると思うので、最高裁の示した理由には少し「無理やり」感を感じる。

また、日本での意匠権侵害訴訟においては、「寄与率」の考え方を用いて損害賠償額を算出したものがある。この手法はまだ確立しているとは言えないが、部分意匠にかかる「化粧用パフ」の事件(大阪高裁 平成18年(ネ)184号)では権利化部分が意匠全体に占める面積の割合に基づいて、寄与率を50パーセントとし、計算した利益額に乗じて損害賠償額を算出している。今回のアップルとサムスンの事件においては、単純に部分意匠に対応する「部品」の価格(例えば、D618677号においては正面パネルの価格)が利益計算の基準となるのか、それとも、日本の「化粧用パフ」事件のような考え方を採るのか、興味深い。さらに、D604305号のようなGUIの場合、直接的に「部品」を構成していないためどのような計算手法が採られるのかについても、非常に興味深い。

【関連記事】
知財トピックス(米国情報)[意匠] 意匠権侵害の損害額算定や機能的形状に関する米国連邦巡回控訴裁判所(CAFC)判決 2015-08-04

***追記(2017年2月8日)***
本文中に、連邦地裁へ差し戻されたことを追記。

※この記事は一般的な情報、執筆者個人の見解等の提供を目的とするものであり、創英国際特許法律事務所としての法的アドバイス又は公式見解ではありません。