中国最初の知的財産専門裁判所である北京知識産権法院が2014年11月に設立されてから2年強が経過したが、同法院は、発明専利(中国専利法において、日本の特許に相当)及び商標の侵害事件において、それぞれの法域でこれまでの最高額となる損害賠償を相次いで認容した。両事件の概要は下記の通りとなっている(なお、2017年2月上旬現在、1元は約16~17円)。

●専利:(2015)京知民初字第441号 2016年12月8日判決
認容額=5,000万元(損害賠償4,900万元、弁護士費用100万元)

セキュリティ対策として銀行から顧客に配付されるUSBキーに関する発明専利権(出願番号 ZL200510105502.1、公報番号 CN100542088C)に対する侵害が争われた。

本件では、北京知識産権法院の裁定により銀行やUSBキー管理機関等から証明されたデータに基づいて、原告(北京握奇数据系统有限公司)の特許製品当たりの合理的な利益に被告(恒宝股份有限公司)の販売数量を乗ずることで、損害額が算定された。なお、この算定において、被告が正当理由なしでデータの提供を拒否しており、これにより関連する司法解釈の規定が適用され、原告の損害額が推定された。また、証拠に基づく主張が考慮された結果、タイムチャージに基づいて、通常よりも高額な弁護士費用も認められている。

弊所調べによれば、北京知識産権法院における専利関連の民事訴訟について、2015年に判決書をもって結案した第一審事件の94件で原告勝訴は68件となっている。そのうち43件(発明専利22件、実用新型(実用新案)3件、外観設計(意匠)18件)において損害賠償が認容されている。この43件中で最高の損害賠償認容額は320万元に過ぎない。また、これまでの中国では、専利法67条に規定される1~100万元の法定賠償額が適用されることが多く、これらと比べると、今回認容された5,000万元の損害賠償がいかに高額であるかがわかる。

●商標:(2015)京知民初字第12号 2016年11月10日判決
認容額=1,000万元

原告(美巢集団股份公司)が所有する2件の商標権(第3303708号及び第4882697号)に対する侵害が争われた。

本件では、ネット上に公開された被告の製造量や売上額に基づいて、侵害製品当たりの合理的な利益に被告(北京秀洁新兴建材有限责任公司)の製造量を乗ずることで、損害額が算定された。その結果、損害額が原告の主張する請求額を遙かに超えており、被告による釈明もなかったため、原告の請求通りに損害賠償が認容された。なお、現地の報道によれば、被告は上訴する意向を示している模様である。

※この記事は一般的な情報、執筆者個人の見解等の提供を目的とするものであり、創英国際特許法律事務所としての法的アドバイス又は公式見解ではありません。