世界11か国における審査期間を調査した報告書(出典(1))において、出願から登録までの期間が長いとされているブラジル(平均10.1年)及びアルゼンチン(平均6.4年)であるが、両国を含む南米諸国で審査早期化に関する施策が相次いでいる。

  • ブラジル、「グリーン特許プログラム」を恒久化
    2016年4月16日まで試行されていた優先審査「グリーン特許プログラム」が、2016年12月6日付の決議(No.175/2016)により制度化された。内容は試行時と同様で、WIPOによって定義されている「グリーン特許」に該当する必要があるほか、クレーム数の制限等がある。なお、試行時には出願から概ね2年以内で特許が発行されたと伝えられていることから、引き続き、審査早期化の効果が期待される。
  • 日本・アルゼンチン、PPHを2017年4月1日より開始
    2016年10月、WIPO第56回加盟国総会にあわせて行われた二国間会合において、日本特許庁は、アルゼンチンとの間で2017年4月1日より特許審査ハイウェイ(PPH)を試行することに合意した。南米ではコロンビアに続き2か国目となる。
    ※日本特許庁ウェブサイトで提供されているガイドライン(要件と手続の詳細)こちら(日本語仮訳)こちら(英語)[いずれも、アルゼンチンへの申請の場合]
  • 南米諸国の「PROSUR」参加国間でPPHを開始
    知的財産に関する地域内協力の枠組み「PROSUR」の参加国であるアルゼンチン、ブラジル、チリ、コロンビア、エクアドル、パラグアイ、ペルー及びウルグアイの各国特許庁によるPPHが、2016年5月に覚書が交わされ、9月に開始された。12月に開催されたPROSURの会合では、ブラジルの関係庁も同国のPPH参加を承認済みであることが報告された模様である。
  • (追記)日本・ブラジル、PPHを2017年4月1日より開始
    2017年4月1日より日本とブラジルとの間でPPHの試行が開始される。出典(5)によれば、概要は下記の通りで、件数及び対象技術分野が制限されている点に留意する必要がある。
    ・試行期間は2017年4月1日より2年間又は両庁それぞれが200件申請を受け付けるまで
    ・日本からブラジル(ブラジル出願)のPPH申請で対象となる技術分野は、IT分野及び自動車関連技術を中心とした機械分野
    ・日本からブラジル(ブラジル出願)のPPH申請で一出願人あたりのPPH申請可能件数は、原則として一出願人あたり4か月に6件まで
    ※日本特許庁ウェブサイトで提供されているガイドライン(要件と手続の詳細)こちら(日本語仮訳)こちら(英語)[いずれも、ブラジルへの申請の場合]
  • (追記)日本・チリ、PPHを2017年8月1日より開始
    2017年8月1日より日本とチリとの間でPPHの試行が開始される。

なお、日本-アルゼンチン間、日本-ブラジル間、日本-チリ間のPPHに関する詳細は、開始時に特許庁ホームページで案内されるとのことである。

【出典】
(1)Center for the Protection of Intellectual Property / Antonin Scalia Law School, George Mason University「The Long Wait for Innovation: The Global Patent Pendency Problem
(2)ブラジル産業財産庁「Exame prioritário “Patentes Verdes” se torna serviço permanente do INPI
(3)経済産業省「世界各国との間で知財分野の国際協力が前進しました
(4)ブラジル産業財産庁「Em reunião sobre futuro do Prosur, INPI anuncia participação no PPH regional
(5)経済産業省「ブラジル、チリとの「特許審査ハイウェイ」がスタートします!~ブラジル、チリでも特許権が早期に取得できるようになります~

【参考】
JETRO サンパウロ事務所 知的財産権部「ブラジルにおける特許出願早期審査制度の現状についての調査」※ブラジル知的財産ニュース等へのリンクを含む上位階層ページはこちら

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***追記(2017年3月17日、4月4日、4月28日)***
日本-ブラジル間、日本-チリ間及び日本-アルゼンチン間のPPHに関する情報を追加

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