依然としてNPE(Non-Practicing Entity;不実施事業体、「パテント・トロール」としばしば同義)の問題が話題に上ることが多い米国特許訴訟だが、2016年は連邦地裁への提起件数が大幅に減少した。

<連邦地裁への訴訟提起件数>

出典 2015年 2016年 減少幅
(1)Lex Machina 「Q4 2016 Litigation Update 5,823 4,520 -1,303
(2)Unified Patents 「2016 Annual Patent Dispute Report 5,838 4,382 -1,456

上表の通り、出典によって件数に相違はあるが、2015年に比べて大幅に減少している点は共通している。

出典(1)の四半期毎のデータによれば、2016年第4四半期の件数が対前年同期比で大幅減(1,570件→1,141件)となっている。2015年12月1日施行の改正連邦民事訴訟規則の影響で、NPEによる駆け込み提起の反動があったとの見解もあるが、年間の減少幅はそれを大きく上回っており、NPE以外による提起件数が減少した可能性も考えられる。

また、米国特許商標庁(USPTO)審判部(PTAB)での付与後手続きの申立件数(出典(3))については、下表の通り、付与後レビュー(PGR)を除いて減少した。とりわけ、2012年9月16日のAIA施行以来、増加が続いていた当事者系レビュー(IPR)の申立件数がわずかながら減少した点は興味深い。

<USPTO審判部(PTAB)への申立件数>

種別 2015年 2016年
当事者系レビュー(IPR) 1,654 1,638
付与後レビュー(PGR) 12 29
ビジネス方法特許に関する暫定プログラム(CBM) 131 91

IPRは、訴訟を提起された被疑侵害者(被告)の対抗手段として用いられることが多いと言われていることから、連邦地裁への訴訟提起件数が減少したことも影響していると考えられる。また、IPRについては、施行以来の申立4,054件のうち審理開始(Trials Instituted)された2,150件では、1,391件で最終書面決定に至っており、全部無効は935件(申立全体の23%)、一部無効は220件(申立全体の5%)となっている。このような結果が、特許権者が新たな訴訟の提起を躊躇させている可能性もある。

【出典】
(1)Lex Machina「Q4 2016 Litigation Update
(2)Unified Patents「2016 Annual Patent Dispute Report
(3)米国特許商標庁「Patent Trial and Appeal Board Statistics 12/31/2016」※最新の統計(毎月更新)を含む上位階層ページはこちら

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