意匠ではパリ条約による優先権主張を行うことができる期間は、第一国出願から6月である(パリ条約4条C(1))。通常は、この期間を徒過すると優先権主張を伴って出願することができなくなるが、米国においては、期限を徒過した場合であっても優先権を回復するための手続きが存在する。

この手続きの前提としては、2016年に日本も加入したPLT(Patent Law Treaty;特許法条約)13条(2)の規定がある。条約締約国は、以下のいずれかの場合に優先権の回復を認める規定を定める必要がある。

①出願人が相当な注意(due care)を払ったにもかかわらず当該優先期間内に後の出願をすることができなかったこと
②その遅延が故意ではなかった(unintentional)ことを当該官庁が認めること

米国は、上記②を選択している。具体的には、37 CFR 1.55(c)に規定があり、要件は以下の通りである。

◆優先権期限(6月=意匠)を経過してから2月以内に出願されていること
◆優先権期限徒過が故意ではない(unintentional)こと
◆Petitionを提出すること

また、庁費用は1,700ドルであり、これに現地代理人費用が加わる。

この制度で注目すべきなのは、申請が非常に簡便である点である。Petitionにおいて「故意ではない」ことの客観的な事実説明は不要で、単に「unintentional」であると述べるのみで良い。費用は高額ではあるが、重要な案件について優先権期限を徒過してしまった場合には、忘れずに利用を検討したい制度である。

なお、PLTの対象に意匠が入っていないため、日本では意匠出願に関しては優先権の回復に関する規定は存在しない。米国では意匠制度が特許法の枠組みに包含されているため、意匠についても優先権の回復が認められるのであろう。

ちなみに、特許に関することであるが、日本はPLTにおける上記②を選択していない。そのため、優先権の回復についての規定は特許法43条の2に存在しているが、その適用には「その特許出願をすることができなかつたことについて正当な理由」が必要である旨を規定している。この「正当な理由」は、地震等の災害などのごく限られた場合のみ認められるものであり、日本では米国に比べて優先権の回復が認められるケースは稀である。

【出典】
米国特許商標庁「MPEP 213.03 Time for Filing U.S. Nonprovisional Application [R-07.2015] III.RESTORING THE RIGHT OF PRIORITY」
米国特許商標庁「Patent Law Treaty
日本特許庁「「正当な理由」による期間徒過後の救済について

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