ツイッターのリツイートと著作権侵害

東京地裁平成27年(ワ)第17928号発信者情報開示請求事件
平成28年9月15日判決

1.はじめに
  SNSのなかでも著名なツイッターにおいて、著作権侵害のあるツイートをリツイートした場合に、リツイート者も著作権侵害をしたといえるのか。今回はこの点が争われた裁判例を紹介します。

2.事案の概要
  本件は、原告が、インターネット上の短文投稿サイト「ツイッター」において、原告の著作物である写真(以下「本件写真」という。)が、
①無断でアカウントのプロフィール画像として用いられ、その後、当該アカウントのタイムライン及びツイートにも表示されたこと、
②無断で画像付きツイートの一部として用いられ、当該アカウントのタイムラインにも表示されたこと、
③②のツイートのリツイートがされ、リツイート者らのアカウントのタイムラインに表示されたこと、
により、原告の著作権(複製権、公衆送信権等)及び著作者人格権(氏名表示権、同一性保持権等)が侵害されたとして、プロバイダ責任制限法4条1項に基づき、①~③のそれぞれについて、最新のアカウントログイン時の氏名、住所、メールアドレス、IPアドレス)等、および、ツイート時の氏名、住所、メールアドレス、IPアドレス等の開示を、ツイッター社に求めた事案です。なお、発信者情報開示請求については、既出TOPICS「インターネット上の権利侵害に対する対処法~プロバイダ責任制限法による発信者情報開示請求~ 」をご参照ください。

3.争点
  本件の主な争点は、
(1) 2.「事案の概要」③のリツイート行為(本件リツイート行為)による本件写真の表示により原告の著作権等が侵害されたことが明らかであるか、
(2) 最新のログイン時IPアドレス等が、プロバイダ責任制限法4条1項により開示されるべき「権利の侵害に係る発信者情報」に該当するか
です。
  なお、①のうちタイムライン、②のうちツイートのURLへの各表示については、原告の著作権(公衆送信権)を侵害することは当事者間に争いがないとして、著作権侵害が認められています。

4.裁判所の判断
(1)争点(1)について
「…本件写真の画像が本件アカウント…のタイムラインに表示されるのは,本件リツイート行為により同タイムラインのURLにリンク先である流通情報2(2)のURL(※ツイッターのツイート画像ファイル保存URL)へのインラインリンクが自動的に設定され,同URLからユーザーのパソコン等の端末に直接画像ファイルのデータが送信されるためである。すなわち,流通情報3~5の各URL(※リツイート者のアカウントのタイムライン)に流通情報2(2)のデータは一切送信されず,同URLからユーザーの端末への同データの送信も行われないから,本件リツイート行為は,それ自体として上記データを送信し,又はこれを送信可能化するものでなく,公衆送信(著作権法2条1項7号の2,9号の4及び9号の5,23条1項)に当たることはないと解すべきである。
  また,このようなリツイートの仕組み上,本件リツイート行為により本件写真の画像ファイルの複製は行われないから複製権侵害は成立せず,画像ファイルの改変も行われないから同一性保持権侵害は成立しないし,本件リツイート者らから公衆への本件写真の提供又は提示があるとはいえないから氏名表示権侵害も成立しない。さらに,流通情報2(2)のURLからユーザーの端末に送信された本件写真の画像ファイルについて,本件リツイート者らがこれを更に公に伝達したことはうかがわれないから,公衆伝達権の侵害は認められないし,その他の公衆送信に該当することをいう原告の主張も根拠を欠くというほかない。そして,以上に説示したところによれば,本件リツイート者らが本件写真の画像ファイルを著作物として利用したとは認められないから,著作権法113条6項所定のみなし侵害についても成立の前提を欠くことになる。
  したがって,原告の主張する各権利ともその侵害が明らかであるということはできない。」
「これに対し,原告は,本件リツイート行為による流通情報2(2)のURLからクライアントコンピューターへの本件写真の画像ファイルの送信が自動公衆送信に当たり,本件リツイート者らをその主体とみるべきであるから,本件リツイート行為が公衆送信権侵害となる旨主張する。
  そこで判断するに,本件写真の画像ファイルをツイッターのサーバーに入力し,これを公衆送信し得る状態を作出したのは本件アカウント2の使用者であるから,上記送信の主体は同人であるとみるべきものである(最三小判平成23年1月18日判決・民集65巻1号121頁参照)。一方,本件リツイート者らが送信主体であると解すべき根拠として原告が挙げるものについてみるに,証拠(甲3,4)及び弁論の全趣旨によれば,ツイッターユーザーにとってリツイートは一般的な利用方法であること,本件リツイート行為により本件ツイート2は形式も内容もそのまま本件アカウント3~5の各タイムラインに表示されており,リツイートであると明示されていることが認められる。そうすると,本件リツイート行為が本件アカウント2の使用者にとって想定外の利用方法であるとは評価できないし,本件リツイート者らが本件写真を表示させることによって利益を得たとも考え難いから,これらの点から本件リツイート者らが自動公衆送信の主体であるとみることはできない。」
(2)争点(2)について
「原告は最新のログイン時のIPアドレスが省令4号の「侵害情報に係るIPアドレス」に,同タイムスタンプが同7号の「侵害情報が送信された年月日及び時刻」に該当するので,プロバイダ責任制限法4条1項の「権利の侵害に係る発信者情報」に当たる旨主張する。
  そこで判断するに,プロバイダ責任制限法4条1項は「特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害されたとする者は〔中略〕当該権利の侵害に係る発信者情報(氏名,住所その他の侵害情報の発信者の特定に資する情報であって総務省令で定めるものをいう。〔中略〕)の開示を請求することができる」と定めており,これによれば,「侵害情報の発信者の特定に資する情報」であれば広く開示の対象となるとみることはできず,「当該権利の侵害に係る」ものでない場合には開示の対象とならないと解すべきである。そして,同項は,これに加えて,具体的に開示の対象となる情報は総務省令で定めるとし,省令はこれを受けて上記のとおり定めているのであるから,省令4号の「侵害情報に係るIPアドレス」には当該侵害情報の発信に関係しないものは含まれず,また,当該侵害情報の発信と無関係なタイムスタンプは同7号の「侵害情報が送信された年月日及び時刻」に当たらないと解するのが相当である。」
「これを本件についてみると,前記前提事実に加え,証拠(甲3,4)及び弁論の全趣旨によれば,本件アカウント1が開設されたのは平成25年4月1日であり,本件プロフィール画像設定行為がされたのは遅くとも平成27年1月21日であること,本件ツイート行為2がされたのは平成26年12月14日であることが認められる。なお,原告が札幌地方裁判所に本件訴えを提起したのは平成27年3月25日である。
  そうすると,原告が開示を求める最新のログイン時IPアドレス等は,本件において侵害情報が発信された上記各行為と無関係であることが明らかであり,省令4号及び7号のいずれにも当たらないというべきである。」

5.解説
(1)上記判旨の通り、本判決は、ツイッターのリツイートの仕組みからして、リツイート行為による著作権侵害がないと判断しました。その具体的理由として、判旨は、2つの点に言及しています。
第一に、本件リツイート行為によって設定されるのは、いわゆる「インラインリンク」であり、その仕組からして、リツイート者のアカウントのタイムラインのURLに流通情報のデータが一切送信されず、また、同URLからユーザーの端末へのデータの送信も行われない、という点です。物理的な仕組みからいえば、リツイート者の行為(リツイートすること)によって著作権侵害が発生しないとしています。
  第二に、規範的(物理的な行為は行っていないとしても、価値評価として、それと同等にみなしうるかどうかの問題)に見ても、リツイート者は著作権侵害の主体であるとみることはできないとしています。
  この点、いわゆる「まねきTV」事件最高裁判決を引用し、本件リツイート行為が、元のツイートの投稿者にとって想定外の利用方法であると評価できないし、本件リツイート者らが本件写真を表示させることによって利益を得たとも考えがたいなどとして、自動公衆送信の主体性を否定しました。この点については、既出のTOPICS「クラウドコンピューティングに関連する著作権法上の問題 」もご参照ください。
(2)また本判決は、原告が開示を求めた最新のログイン時IPアドレスは、本件において、プロバイダ責任制限法4条1項のいう「侵害情報の発信者の特定に資する情報」には当たらないと判断しました。
その理由は、著作権侵害に該当するプロフィール画像の設定、または、著作権侵害に該当するツイートは、最新ログインよりも前に行われたことであり、したがって、最新ログイン時のIPアドレスとは無関係であるというものです。
  これに対し原告は、同一アカウントからは同一人が投稿を行うことが予定されており、アカウントへのログインにはユーザーIDとパスワードが必要であるから、最新のログイン時にログインした者が侵害情報発信者と同一人であることは担保されているなどと主張しましたが、裁判所は、上記法と省令の規程に照らし、これを退けました。
  原告が、情報発信時のIPアドレスではなく、最新ログイン時のそれを開示するよう主意的に請求したのは、被告が、前者の情報を取得していることを立証することが困難と判断したからか、取得しているとしてもそれが時間経過により消去されていたからと思われます。
  最新ログイン時のIPアドレスが情報発信時のそれに比べて「侵害情報の発信者の特定」に資する力が弱いというのはその通りと思われますが、原告の主張する通り、多くのアカウントは、1つのアカウントに対し、一人のユーザーがいること、侵害情報の発信時(平成27年1月21日)は訴えの提起日(平成27年3月25日)からそう離れていないこと、を考慮すると、最新ログイン時のIPアドレスが侵害情報の発信者の特定に資する情報であると考えられなくもありません。(実際、最新ログイン時のIPアドレスをもって開示の対象とし、これが認められたと思われる事例(外部リンク) も見受けられる。)
  プロバイダ責任制限法の委任を受けた省令では、「侵害情報の発信者の特定に資する情報」が具体的に列挙されているが、何が「資する」といえるのかは評価的な判断が含まれることになり、本判決においては、裁判所は情報開示に抑制的な姿勢を示したとも言えると思われます。

※この記事は一般的な情報、執筆者個人の見解等の提供を目的とするものであり、創英国際特許法律事務所としての法的アドバイス又は公式見解ではありません。