近年、米国連邦最高裁判所は知財関連の事件を多く取り上げており、昨年2016年12月には意匠権(Design Patent)の損害賠償額の算定基準について判決を下している(同判決に関する記事はこちら)。その後、2017年に入ってからは3月末までで、米国連邦最高裁はすでに下記の特許2件・著作権1件について判決を下している。

なお、特許権の消尽、特許訴訟提起の裁判地等を争点と知的財産権が関連する下記事件についても2017年4月末時点で係属中であり、多くは2017年夏までに判決が示される見込みとなっていることから、米国連邦最高裁の判断が引き続き注目される。

  • Impression Products, Inc. v. Lexmark International, Inc.
    争点=特許権の消尽
    → 判決に関する情報は追記(2017年5月31日)参照
  • TC Heartland LLC v. Kraft Foods Group Brands LLC
    争点=特許訴訟提起の裁判地
    → 判決に関する情報は追記(2017年5月25日、26日、31日、7月14日)及び続報記事参照
  • Lee v. Tam
    争点=ランハム法(米国商標法)1052条(a)項の誹謗に関する規定(disparagement provision)と米国合衆国憲法修正第1条における言論の自由との関係
    → 判決に関する情報は追記(2017年6月20日)参照
  • Amgen Inc. v. Sandoz Inc.
    争点=42 U.S.C. § 262におけるバイオシミラーの取扱い等(※特許法(35 U.S.C)に関する規定が直接の争点ではない)
    → 判決に関する情報は追記(2017年6月20日)参照
  • Water Splash, Inc. v. Menon
    争点=ハーグ送達条約(Hague Service Convention)と郵送による訴状の送達(※直接的には知財関連の事件ではないが、判決の内容によっては、郵送による訴状の送達であっても日本企業に対する特許侵害訴訟の提起が認められる可能性があることから注目できる事件とされている)
    → 判決に関する情報は追記(2017年5月25日、26日、31日、7月14日)参照

***追記(2017年5月25日、26日、31日、7月14日)***
2017年4月末時点で係属中であった事件のうち、下記の2件についての判決が現地時間の5月22日に下された。

  • TC Heartland LLC v. Kraft Foods Group Brands LLC (Supreme Court 2017) No. 16-341
    原告が米国企業を被告として特許侵害訴訟を提起できる裁判地は、28 U.S.C. §1400(b)の規定に従って、「被告の住所地(原文は、”where the defendant resides”)」又は「被告が侵害行為を行い、かつ、正規で確立された営業所/事業所を有する地(原文は、”where the defendant has committed acts of infringement and has a regular and established place of business”)」に対応する地区であると判断。判決では、「被告の住所地」について関連する条文の変遷及び過去の裁判例を検討。本判決により、特に米国企業を被告とする特許侵害訴訟については、原告に有利な裁判地として知られていたテキサス州東部地区への提起が困難になり、多くの米国企業が住所地としているデラウェア州地区等での提起が増えるとの見方が強まっている。また、NPE(Non Practicing Entity:不実施事業体)、特に、いわゆるパテント・トロールが原告の訴訟に大きな影響を与えると見られている。

    (※本判決に関する記事はこちら

  • Water Splash, Inc. v. Menon (Supreme Court 2017) No. 16-254
    下記引用に示されるように、条件付きにてハーグ送達条約は郵送による送達を禁じていないと判断。ただし、本判決の判示には、日本企業に対して郵送での訴状送達が必ず認められるべきと解される内容までは含まれていないと考えられ、具体的な影響を推測した考察は現地においても現時点では見受けられない。

    判決文12ページより引用)
    In other words, in cases governed by the Hague Service Convention, service by mail is permissible if two conditions are met: first, the receiving state has not objected to service by mail; and second, service by mail is authorized under otherwise-applicable law.

***追記(2017年5月31日)***
特許権の消尽が争点であった下記事件について、現地時間の5月30日に判決が下された。

  • Impression Products, Inc. v. Lexmark International, Inc. (Supreme Court 2017) No. 15-1189
    特許権者等による製品の公認された販売(authorized sale)について、国内消尽だけでなく、国際消尽も認めるとの趣旨。日本では、平成9年7月1日のBBS最高裁判決において、国際消尽を認めなかったものの、「特許権者が、日本国外において特許製品をいったん譲渡した場合には、その譲受人との間で、特許製品の販売先等を制限する特段の合意があり、かつ、かかる合意が当該特許製品に明示されていた場合を除き、譲受人および以後の転得者に対して特許権は及ばない」とする旨の判断が示されている。実務的には、今回の米国最高裁判決の判断を踏まえて、日本のBBS最高裁判決に沿った考え方とは異なる対応の要否について、米国特許クレームと製品との関係、米国外での販売に関する態様・契約等の個別具体的な事情を考慮した検討が必要になるものと考えられる。

    【参考】経済産業省「知的財産権Q&A Q3.特許権にかかる並行輸入

***追記(2017年6月20日)***
下記事件についても、それぞれ現地時間の6月12日及び6月19日に判決が下された。

  • Sandoz Inc. v. Amgen Inc. (Supreme Court 2017) No. 15-1039
    (※上述の別件(No. 15-1195)とあわせて判断されたため、当事者名の順番は逆になっている)
    判決文の骨子は下記の通り。

    Syllabusからの引用に根拠法の文言を追加)
    Held: Section 262(l)(2)(A) (of the Biologics Price Competition and Innovation Act of 2009 (BPCIA)) is not enforceable by injunction under federal law, but the Federal Circuit on remand should determine whether a state-law injunction is available. An applicant may provide notice under §262(l)(8)(A) prior to obtaining licensure.

【出典】
米国連邦最高裁判所「Docket Search
日本特許庁「外国産業財産権制度情報アメリカ合衆国 商標法(日本語仮訳)

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