既報では、ブラジルにおける「グリーン特許プログラム」の恒久化をはじめとして南米諸国における審査早期化に関する施策を取り上げたが、本稿では、そのうち特許審査ハイウェイ(PPH)について、南米諸国以外も含む最近の動きを紹介する。

<ベトナム>
日本とベトナムとの間では2016年4月1日より3年間の予定でPPHの試行が開始されたが、申請数が1年間の上限である100件に達したため、同年8月24日より受付を一旦停止していた。試行2年目になる2017年分は4月1日より受付が開始されている。

現地代理人からの情報によれば、昨年の申請分についてすでに許可された出願が出ている模様であり、ベトナムでは特許付与までに平均3~4年以上、統計によっては平均で約7年6か月を要するとあることから、早期権利化の必要性が高い案件については、活用を検討するに値すると考えられる。

***追記(2017年5月31日)***
申請件数が100件に到達したため、2017年5月30日をもって受付が一旦停止された。受付再開は2018年4月1日予定とされている。

<台湾>
2012年5月より実施されていた日台特許審査ハイウェイ試行プログラムを2017年5月1日から更に3年間継続することが、日本台湾交流協会と亜東関係協会との間で合意に至った。

台湾経済部智慧財産局(TIPO)の発表によれば、台湾ではPPH申請から最初のオフィスアクション(OA)までの平均期間は1.88か月、最終処分までは4.5か月とされており、出典(8)の統計データも同様のものとなっている。また、全出願の統計データは、最初のOAまでの平均期間は14か月、最終処分までは21か月とされていることから、台湾ではPPHによる審査早期化の効果が高いことがわかる。

<ブラジル>
既報のとおり、2017年4月1日より日本とブラジルとの間でPPHの試行が開始された。概要は下記の通りで、件数及び対象技術分野が制限されている点に留意する必要がある。

  • 試行期間は2017年4月1日より2年間又は両庁それぞれが200件の申請を受け付けるまで
  • 日本からブラジルへのPPH申請で対象となる技術分野は、IT分野及び自動車関連技術を中心とした機械分野(具体的には、出願が所定の国際特許分類(IPC)のクラスの何れかに分類されている必要有り)
  • 日本からブラジルへのPPH申請で一出願人あたりの申請可能件数は、原則として一出願人あたり4か月に6件まで

※日本特許庁ウェブサイトで提供されているガイドライン(要件と手続の詳細)こちら(日本語仮訳)こちら(英語)[いずれも、ブラジルへの申請の場合]

<アルゼンチン>
同じく既報のとおり、2017年4月1日より日本とアルゼンチンとの間でPPHの試行が開始されている。

※日本特許庁ウェブサイトで提供されているガイドライン(要件と手続の詳細)こちら(日本語仮訳)こちら(英語)[いずれも、アルゼンチンへの申請の場合]

【出典】
(1)日本特許庁「日ベトナム特許審査ハイウェイ試行プログラムについて
(2)藤田 明 他「アジア各国特許庁の審査期間の調査 — 出願から登録までに要する時間 —
(3)日本貿易振興機構バンコク事務所知的財産部「ASEAN各国における産業財産権の権利化に係る費用及び期間に関する調査
(4)新興国等知財情報データバンク「ベトナムにおける特許の早期権利化の方法
(5)日本特許庁「日台特許審査ハイウェイ試行プログラムについて
(6)台湾経済部智慧財産局「TIPO-JPO PPH MOTTAINAI pilot program extended for three years from May 1, 2017
(7)台湾経済部智慧財産局「Statistics on PPH requests
(8)日本特許庁「The Patent Prosecution Highway (PPH) Portal Web Site(日本語):統計情報
(9)日本特許庁「特許審査ハイウェイについて
(10)ブラジル産業財産庁「Legislação – Patente」 ※発表への直接リンク「Resolução nº 184, de 24/03/2017(PDFファイル)」

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