知的財産専門の裁判所である北京知識産権法院で、2017年3月にアップル社のiPhoneに関する意匠権侵害の有無についての判決が出された。

本事件では、アップル社によるiPhone 6及びiPhone 6 Plusを販売等する行為が中国現地の企業である佰利社の意匠権(登録番号:ZL201430009113.9 ※リンク先は、欧州連合知的財産庁(EUIPO)のDesignView)を侵害するものとして、2016年5月に北京市知識産権局による販売差止めの行政処分がなされていた。その後、アップル社がこの行政処分を不服として北京知識産権法院に上訴していた。

今回、北京知識産権法院が下した判決は、アップル社のiPhone 6及びiPhone 6 Plusと佰利社の登録意匠とは非類似であり、意匠権侵害は成立しないというもので、販売差止めの行政処分は無効とされた。なお、アップル社の上訴により、iPhone 6及びiPhone 6 Plusの販売が実際に差し止められることはなかった。

判決に対して佰利社が上訴する可能性があると伝えられているが、ここまでの経緯を見ても、中国での事業展開に当たり、以下のような事項を感じさせるものである。

  • 販売前の秘密情報管理の大切さ
    情報の真偽は定かではないが、佰利社は、iPhone 6等のデザイン発表前にインターネット等で出回ったリーク画像に基づいて自社商品を開発し、意匠出願を行ったとも言われている。仮にこれが事実であったとしても、2016年1月にあった無効審判の審決で当該意匠権は有効と判断されていることから、販売前の秘密情報管理の大切さを示していると言えよう。
  • 事前のクリアランス調査の難しさ
    ご存知の通り中国には膨大な数の登録意匠が存在しており、費用的にも時間的にも限られた中では、万全なクリアランス調査を行うことは非常に難しい。実際にしっかりとした調査をできるだけ安価に行うためには熟練のサーチャーによる効率的な調査を行うほかないが、その他、「国家知識産権局専利検索咨詢中心」による簡易な調査の利用のほか、自社による早期権利化の対応などの出来うる措置を検討することも重要と考えられる。
  • 中国の裁判所は内外人に公平であること
    この点は、特に大都市部の裁判所については既に広く認識されていたところであるが、あらためて認識することができる。
  • 意匠の類否判断について
    本稿執筆時点で、具体的な類否判断の手法についての詳細な情報は得られていないが、裁判所は、スマートフォン筐体の側面の弧状面の態様の違いを重視したと伝えられている。先行公知意匠を参酌した上での判断なのか等も興味深い。

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