一部の出願人によって手続上の瑕疵(出願手数料の未払い)のある商標登録出願が大量に行われている問題は、メディアによる報道で広く知られるようになり、政府・知的財産戦略本部が2017年5月に公表した「知的財産推進計画2017」においても対応の検討が求められていた。

昨年2016年5月、特許庁は、当該一部の出願人による先願の存在を理由に商標登録を断念することのないように注意を呼びかけていたが、今回は更なる対応として、下記の2点を含むお知らせを2017年6月21日付けで公表した。

  • 従来から、手続上の瑕疵のある出願の後願となる商標登録出願について、当該後願となる商標登録出願に手続上の瑕疵がないことが確認できれば、先願となる手続上の瑕疵のある出願が却下されるのを待つことなく、実体審査を開始する運用を行っていること
  • 拒絶理由となる先願が手続上の瑕疵のある出願に該当し、当該先願となる出願の却下を確認次第、登録査定を行う旨を、拒絶理由通知に明示的に記載するよう、運用を変更すること

下図に示されるような状況では、後願に他の拒絶理由がない場合には、手続上の瑕疵のある先願の影響で後願の登録査定が遅れることになるが、今回の運用変更により拒絶理由通知において明示的に記載されることで、後願の出願人は、これまでよりも容易に手続きの続行を決定できるようになった。

<該当する出願の実体審査の運用(特許庁のお知らせより引用)>

Japan-20170725

なお、2016年6月に日本において効力を生じた「商標法に関するシンガポール条約(STLT)」等の要請もあって、出願手数料が未払いの出願を不受理とするように商標法を改正することは困難と考えられる。しかしながら、今回のお知らせにおいても特許庁が説明しているように、出願後に出願手数料の支払いがあったとしても、出願人の業務に係る商品・役務について使用するものではない場合(3条1項柱書)や、他人の著名な商標の先取りとなるような出願や第三者の公益的なマークの出願である等の場合(4条1項各号)には、商標登録は認められない。また、当該一部の出願人が頻繁に行っている分割出願には、手続上の不備により出願日の遡及がない場合があることから、出願の経過情報にも留意した上での対応が必要である。

【出典】
特許庁「手続上の瑕疵のある出願の後願となる商標登録出願の審査について(お知らせ)

【参考】
登録第5756402号商標に対する登録異議の申立て
※「経過情報」の審判情報タブから確認できる異議2015-900229に対する商標決定公報では、決定の理由において、審判部合議体が「原出願1は,原出願2の出願に係る指定役務のすべてを指定役務としており,『商標登録出願の一部を一又は二以上の新たな商標登録出願とすることができる』としている商標法第10条第1項の要件を満たしていない(下線は,合議体による。)」との判断を示している。同様の判断が示された他の決定例・裁判例も存在しているが、当該一部の出願人による分割出願には同様の不備がない場合も想定されるため、出願日の遡及効については個別の注意を要する。

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