近年、特許の分野で利用件数が増加している早期審査だが、意匠においても同様の制度がある。今回は、特許における早期審査との違いや実際の経験も踏まえながら、意匠における早期審査を紹介する。

まず、意匠では早期審査の対象となる出願は、以下の通りである。

(1)権利化について緊急性を要する実施関連出願
(2)外国関連出願

このうち、(1)については、特許の「実施関連出願」と異なっている。すなわち、自社による実施(実施予定)があるだけでは早期審査の対象とはならず、第三者が許諾なく、出願に係る意匠を実施等していることが明らかな場合や、出願人自身が第三者から警告を受けている場合等に限られている。そのため、意匠において早期審査を請求するケースは、実務上は(2)の外国関連出願である場合が多い。

なお、当初から外国出願を予定している場合であれば、出願予定国への出願をもって早期審査の理由とすることで問題ないが、そうでない場合は、早期審査のためだけに外国出願を行うことになってしまう。そこで、少しでも費用を抑えるためには、現地代理人費用も含めた現地費用の低い国への出願を行うほか、ハーグ協定に基づく国際意匠出願を行うことも一考に値する。なぜならば、国際意匠出願では、外国出願の時点では現地代理人費用が発生しないからである。

また、(1)については、実際に模倣品が発生している場合、 運用により、以下の流れでさらに早期な審査(申請から1か月以内にファーストアクションの通知受領)が可能である。

①特許庁への連絡(主に電話)→ ②オンラインで早期審査申請 → ③面接 → ④特許庁での早期審査の選定手続き → ⑤選定結果の連絡(電話)→ ⑥実際の審査

この運用の特徴としては、「早期審査に関する事情説明書」の【早期審査に関する事情説明】の欄には詳細な説明の記載や物件を添付せず、面接で具体的な事情を説明することができる点を挙げることができる。

2016年における意匠の早期審査の申請件数は113件で、特許に比べて極めて少ない。これは意匠の通常のファーストアクションまでの期間が約6か月(早期審査は平均1.9か月)であり、早期審査をする必要性が低いという理由が考えられる。なお、模倣品対策に対応した早期審査については、2016年の実績で13件、申請からファーストアクションまでの期間は平均0.7か月であった。

【出典】
特許庁「意匠早期審査・早期審理制度の概要
特許庁「特許行政年次報告書2017年版:第2部第2章 意匠における取組 5.出願人のニーズを踏まえた早期審査の運用

【参考】
特許庁「特許出願の早期審査・早期審理について
特許庁「特許行政年次報告書2017年版:第2部第1章 特許における取組 1.審査の迅速性を堅持するための取組
特許庁「商標早期審査・早期審理の概要
特許庁「特許行政年次報告書2017年版:第2部第3章 商標における取組 6.出願人のニーズを踏まえた早期審査の運用

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