既報では、最高人民法院公表の「中国法院知識産権司法保護状況(2016)」を取り上げたが、中国における知的財産紛争の現状を示す報告書は他にも様々なものがある。本稿ではそのうち2つを取り上げる。

司法ビッグデータ特別報告「知的財産権侵害」
プレゼンテーションのスライド形式による報告で、2015年1月1日から2016年12月31日までの知的財産権侵害に関する人民法院(裁判所)での民事案件第一審を対象にして、下記を含む分析がまとめられている。表2に示されるように約半数にあたる訴訟が取下げで終了している点が興味深い。

<表1:請求支持の状況> <表2:訴訟終了の種別>
201709CN1 201709CN2
*日本の調停に類似する点もあるが、人民法院自らが行い、裁判の結果として示される点で異なる

 国家知識産権局統計年次報告書
中国では、専利権(特許、実用新案、意匠)の侵害に関する紛争解決に、人民法院による「司法ルート」と、地方知識産権局による「行政ルート」の2つの選択肢がある。近年、行政ルートの件数増加が顕著で、中国国外からの利用も増加している。

<表3:行政ルートの専利権侵害紛争受理件数(法域別)>
2013年 2014年 2015年 2016年
合計 4,684 7,671 14,202 20,351
特許 504 1,010 1,865 2,192
実用新案 1,589 3,461 7,836 7,382
意匠 2,591 3,200 4,501 10,777
[参考]司法ルート民事案件第一審 9,195 9,648 11,607 12,357
※行政ルートに関する2016年の件数は、「专利统计年报2016」及び「2016年主要工作统计数据及有关情况」による

 

<表4:行政ルートの専利権侵害紛争受理件数(権利者地域別)>
2012年 2013年 2014年 2015年 2016年
中国(CN) 2,141 4,366 7,157 (35,099) 19,548
中国(CN)以外 84 318 514 (745) 803
日本(JP) 8 60 58 (129) 95
米国(US) 3 56 62 (119) 63
ドイツ(DE) 29 12 109 (60) 163
※各年とも同一名称の統計に示されている数値を用いているが、他のデータとの比較参照から2015年の件数(特に中国(CN))には侵害紛争以外の事案が含まれていると考えられるため(  )を付している

***追記(2017年10月19日、10月20日)***
表3及び表4に2016年のデータを追加。リンク切れの出典についてURLを変更。

【出典】
中国最高人民法院「司法大数据研究院 司法案例研究院 司法大数据专题报告之知识产权侵权
中国中央人民政府「知识产权局介绍2016年主要工作统计数据及有关情况
中国国家知識産権局「统计信息国家知识产权局统计年报

【参考】
科学技術振興機構(JST)「中国知財戦略に関する調査」(2017年3月)

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