AstraZeneca Canada Inc. v. Apotex Inc. (2017 SCC 36)

2017年6月30日、カナダ最高裁は、判事9名の全員一致にて、「プロミス・ドクトリン(promise doctrine;見込み論)」を有用性(utility)の判断基準とすることを否定する判決を下した。

カナダの裁判所は、クレームされた発明により実現可能であることが出願日時点では実証されていない「明確なプロミス(promise;見込み)」を述べている場合、有用性欠如により特許は無効であると判断してきた。最高裁は、このような判断の根拠となっていたプロミス・ドクトリンが特許法27条(3)(明細書の記載要件)及び2条(発明の定義)を不適切に組み合わせたものであるとしつつ、有用性について下記のように判示した。

  • 裁判所は、特許でクレームされた発明の主題を特定するべきである。
  • 裁判所は、主題が有用であるか、つまり実用的な目的(すなわち、実際の結果)がありうるかを検討するべきである。
  • 主題の性質に関するある1つの効果で十分であり、有用性は出願日時点における実証または十分な予測のいずれかにより立証されるべきである。

これまでのカナダ特許出願の明細書では、有用性のプロミスと解釈されうる記載が避けられてきたが、本判決によりそのような実務が変わることになる。しかしながら、判決の説示には、明細書における不正確・不完全な開示等に関する注意喚起もあることから、確証のない事項については言い回しを和らげること等の検討は引き続き必要と考えられる。

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