日本では、マキサカルシトール製造方法事件における知財高裁大合議判決(平成27(ネ)10014)及びその上告審の最高裁判決(平成28(受)1242)により、均等論があらためて脚光を浴びました。時期を同じくして、昨年から今年にかけて、欧州ではドイツ及びイギリスにおいて、均等論を判断した注目判決が相次いでいます。

<ドイツにおける均等論>
1986年のFormstein判決、2002年のSchneidmesser I判決及びSchneidmesser II判決がドイツにおける均等論に関する主要判決とされています。これらの判決(特に、Schneidmesser I 判決)に沿って、均等論は下記を概要とする三要件に基づいて判断されてきました。

1.特許発明の特徴とは異なる実施形態(以下、「変形態様」)が、同様の効果をもたらすことにより、発明の課題を解決するか?
2.優先日の時点で、当業者は変形態様に同じ効果があることを想到できたか?
3.特許クレームの教示内容により、変形態様で同じ効果が得られ、同等の価値を有する均等であるとの考察に当業者は導かれるか?

直近のところでは、2016年6月14日に連邦最高裁判所(Federal Court of Justice)が、審査段階においてクレームしなかった実施形態について均等侵害を認めなかった判決(XZR 29/15)が注目されています。

<イギリスにおける均等論>
2017年7月12日、イギリス最高裁判所は、Eli Lilly v. Actavis UK事件([2017]UKSC 48)において、発明概念及び当業者の観点に基づく手段及び結果の考察のほか、発明の本質を加味した三要件に基づいて均等侵害を認める判断を示しました。

また、この判決では、明細書及びクレームだけでは論点が全く不明確な場合や、ファイルの内容を無視することが公益に反する場合等には審査経過を参酌できるとした点も特筆できます。

ドイツ及びイギリスの近況はいずれも、上述の要件のあてはめだけでなく、審査経過に基づく禁反言に対する注意を喚起する判断としても注目できる判決で、今後の動向が注目されます。

【参考】
クレメンス トビアス シュタインスほか「国境を超えた消極的確認的訴訟、均等論、出願経過を踏まえたクレームの解釈」知財管理 Vol. 65 No.11(2015)※特に、ドイツにおける均等論の要件について

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知財トピックス(米国情報)[特許]<コラム>米国における均等論の近況 2016-05-10

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