2017年7月25日、米国特許商標庁(USPTO)はブログ「Director’s Forum」にて、特許法101条の特許適格性(保護適格性;日本の発明該当性に相当)に関する報告書の概要を紹介した。公表されたのは、全64ページの報告書「Patent Eligible Subject Matter: Report on Views and Recommendations from the Public」で、特許法101条に関する判例の変遷がまとめられており、近年の主要な連邦最高裁判決であるBilski, Mayo, Myriad及びAliceの各事件についても概要が示されている。さらに、連邦巡回控訴裁判所(CAFC)による判決の概要は、ライフサイエンス技術ではAriosa及びRapid Litigation Managementの両事件、コンピュータ関連技術ではEnfish及びAmdocsの両事件まで網羅している。

その他、報告書では、ラウンドテーブルの開催やパブリックコメントの募集を通して得られた意見も取りまとめられており、付録には、知的財産権関連団体等による特許法101条の改正試案も含まれている。
(注:既報の改正案S.1390「STRONGER Patents Act of 2017」には101条に関する事項は含まれていない。)

なお、USPTOの報告書公表に先立つ今年1月には欧州委員会が同種の報告書「Report on the Trends and Current Practices in the Area of Patentability of Computer Implemented Inventions within the EU and the US」を公表しているが、こちらは欧米の特許適格性に関する動向と現在の実務を中心に取りまとめたものとなっている。

米国における直近の動きでは、ソフトウエア関連発明に関しては、8月15日にCAFCがVisual Memory v. Nvidia事件において対象特許(US 5953740 A)の特許適格性を認める判断を示したことに注目できる。判決では、コンピュータメモリシステムのクレームに係る発明によってもたらされる技術的な改良等に着目して、2人の判事は抽象的アイデアではないと判断したものの、1人のCAFC判事は反対意見を示しており、依然として、抽象的アイデアに関する特許適格性の有無を明確に分ける境界線は引かれていないと言える。

一方、バイオ/化学/薬学関連技術の発明に関しては、8月2日にUSPTOで開催された「Biotechnology/Chemical/Pharmaceutical Customer Partnership」において、米国特許法101条に関する審査の傾向、拒絶理由解消・審査促進のための提案、事例の紹介などについて、USPTOの審査官と法律事務所所属の弁護士からの発表があった。当日の発表資料も公表されており、ソフトウエア関連発明と比べて裁判例が少ないバイオ/化学/薬学関連技術の発明の特許適格性を考える上で、有用な資料と考えられる。

【出典】
米国特許商標庁「Director′s Forum: New Report Presents Viewpoints on Patent Subject Matter Eligibility
欧州委員会「Report on the trends and current practices in the area of patentability of computer implemented inventions within the EU and the US
米国特許商標庁「Biotechnology/Chemical/Pharmaceutical/Customer Partnership Conferences

【参考】
米国特許商標庁「Subject matter eligibility
※裁判例リスト「Chart of subject matter eligibility court decisions(エクセルファイル)」、裁判例や抽象的アイデアの例を類型別にまとめたクイックリファレンス「Decisions holding claims eligible and identifying abstract ideas」等が随時更新されている。

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