特許(発明専利)の出願件数が2011年から6年連続で世界一となり、2015年から2年連続で100万件を超えた中国では、公開公報の発行回数が2017年6月6日から毎週火曜と金曜の2回に増えるなど、出願処理の全般的な効率向上が求められていることは想像に難くありません。それと同時に気になるのが、特許の質です。

中国における特許出願件数は2016年には1,338,503件と、日本(318,381件)の4倍を超えており、侵害予防の観点からも中国における特許の質は気になるところですが、特に「特許出願」の質に絞ると、現状では玉石混交であるとの見方が少なくありません。例えば、特許査定率のデータは中国国家知識産権局(SIPO;日本の特許庁に相当し、商標以外を管轄とする機関)からは公表されていませんが、近年のデータを用いて「登録件数/出願件数」を計算すると日本の0.6~0.7に対して、中国は0.2~0.3と開きがあり、審査請求件数(日本:241,412件、中国:809,661件[いずれも2015年])や平均審査期間(日本:16.5か月、中国:21.9か月[いずれも2015年])の違いを考慮しても、中国では登録に至る質を有する特許出願の割合が日本と比べて低いと推察されます。

SIPOも、特許の質に関する現状を良しとせず、継続的な取り組みを行っています。

最近では、公開公報の発行回数が2回に増えた直後の6月9日に、SIPOのウェブサイトに副局長へのインタビュー記事が掲載され、イノベーション促進のためには出願件数の増加だけでなく、特許の質向上が必要であるとの認識が示されています。

また、具体的な施策で興味深いのが、2017年4月1日に施行された「専利出願行為の適正化に関する若干規定」です。この若干規定が施行される前の意見募集稿の説明では、SIPOが「異常」との表現を用いて質に問題のある出願が存在することを認める内容が含まれています。説明では、そのような出願がどの程度の割合で存在しているかまでは言及がなく、また、出願の質を客観的に認定することも困難です。しかしながら、中国国内の出願人は、手続費用をまかなうために国・自治体等による各種補助金等の優遇政策を活用している現状があるため、SIPOが、出願人による「異常」な特許出願を抑制し、特許の質向上を求めることは、イノベーション促進以外に優遇政策の適切な運用の観点で考えても当然と言えます。

【出典】
中国国家知識産権局「关于调整专利公开公告出版周期的公告(第241号)
中国国家知識産権局「实施专利质量提升工程加快建设知识产权强国
日本特許庁「特許行政年次報告書2017年版
中国国家知識産権局「Annual Report 2016
中国国家知識産権局「《国家知识产权局关于修改<关于规范专利申请行为的若干规定>的决定》4月1日起施行
ジェトロ「知的財産に関する情報 法律・法規-意見募集稿:専利出願行為の適正化に関する若干規定(意見募集稿)(日本語仮訳:意見募集稿意見募集稿の説明意見募集稿新旧対照表)」

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