既報の特許異議申立て及び特許無効審判に続き、本稿では特許以外の法域にも広げつつ知的財産権訴訟の現状を取り上げる。

<図1:知的財産権関係民事事件・種類別受件数(全国地裁第一審)>
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図1は、知的財産権関係民事事件のうち、全国地裁第一審の新受件数の推移を示している。グラフの作成にあたっては、出典(1)における全国地方裁判所(全国地裁第一審)の新受件数全体及び法域別割合について最新版及び過去公表分のデータを用いて算出した。年によって入れ替わりはあるものの、新受件数の傾向としては、特許権が最も多く、その後に著作権、不正競争防止法、商標権の3つが続き、件数が大きく開いて意匠権、商法その他、実用新案権となっている。

一方、全国高裁控訴審の新受件数は知的財産権関係民事事件全体で、2013年は148件、2014年は169件、2015年は161件、2016年は141件であった(出典(3)参照)。

<図2:審理期間別の既済件数(2016年:知的財産権訴訟第一審)>
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図2は、出典(2)で報告されている知的財産権訴訟第一審の既済件数を審理期間別に示したものである。平均審理期間は14.0か月(出典(3)では13.3か月)であるが、約半数は1年以内で終局(和解、取下げ等を含む)に至っていることがわかる。

なお、出典(3)によれば、全国高裁控訴審については、2016年の平均審理期間は7.8か月となっている。

<図3:特許権の侵害に関する訴訟における統計(東京地裁・大阪地裁、2014~2016年):判決・和解の内容>
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<図4:特許権の侵害に関する訴訟における統計(東京地裁・大阪地裁、2014~2016年):無効の抗弁の有無・無効の抗弁に対する判断(判決により終局した事件:特許権単位)>
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出典(3)では、知的財産権訴訟のうち特許権侵害訴訟に着目した図3~4のグラフも示されている。図3からわかるように認容判決(原告勝訴)は全体の16%であるが、給付条項ありの和解が27%を占めており、合計で43%となっている。これは出典(4)の特許庁報告書で示されている過去のデータ(2011~2013年において43~47%)から大きな変化がないことを示していると考えられる。

なお、無効の抗弁により特許無効と判断された事件は全体の17%で、近年における無効審判の無効率(2014~2016年で18~25%)を下回っており、無効の抗弁(出典(5)参照)及び無効審判(出典(6)参照)のいずれについても2007~2008年頃に比べて特許無効の判断が示される割合は大きく低下している。

【出典】
(1)知的財産高等裁判所「知財高裁パンフレット(2017.10及び過去公表分)」
(2)裁判所「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書(第7回)(平成29年7月21日公表):II 地方裁判所における民事第一審訴訟事件の概況及び実情 1.2.3 知的財産訴訟
(3)知的財産高等裁判所「知財高裁の資料 > 統計
(4)特許庁「平成26年度 特許庁産業財産権制度問題調査研究報告書特許権等の紛争解決の実態に関する調査研究(53頁)
(5)特許庁「平成25年度 特許庁産業財産権制度問題調査研究報告書侵害訴訟等における特許の安定性に資する特許制度・運用に関する調査研究(50~53頁)
(6)小野 孝朗「月刊パテント2016年11月号:信頼性の高い審判の実現に向けて─最近の動向と取組(114頁)

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