英国知的財産庁(UKIPO)が2017年11月2日付けで公表した統計資料「Facts and Figures 2016」によれば、2016年におけるイギリス国内の出願件数は、特許が引き続き横ばいとなった一方、意匠と商標(国際登録を含む(ただし、追加区分を除く))が大きく増加した。

同資料では月ごとの出願件数が示されていないため、イギリスがEU離脱(ブレグジット)を決めた2016年6月23日の国民投票以降に出願件数の急増があったかは定かではない。しかしながら、EUとは別の枠組みであるためにブレグジット後も現在と同様にイギリス特許の取得に利用できる欧州特許条約(EPC)に基づく出願と異なり、EUの枠組みである登録共同体意匠(Registered Community Design; RCD)及び欧州連合商標(European Union Trade Mark; EUTM)の出願については、今後の離脱交渉の過程で議論される移行措置の内容に関係なく、あらゆる懸念を回避するための安全策としてイギリスへの直接出願のみ、又は、RCD及びEUTMとの併願を選択した出願人によって、2016年の出願件数増加がもたらされた可能性がある。

〈図:イギリス国内出願件数の推移(2011~2016年)〉
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上図の通り、以前から増加が続いていた商標(2015年:対前年比8%増、2016年:同12%増)と比べて、意匠(2015年:同27%増、2016年:同55%増)の方が2016年の増加幅が顕著である。この背景には、ブレグジット後を意識した安全策のほかに、2016年10月施行の意匠関係料金大幅引き下げの影響が考えられる(例:「オンラインで30意匠を出願する場合」改定前=1,220ポンド(約185,000円) → 改定後=110ポンド(約17,000円)※2017年12月下旬現在、1ポンドは約152円)。

なお、意匠に関しては、イギリスは2017年中に意匠のハーグ協定への加盟することを目指していたが、目標は達成できなかったものの、公式ツイッターでの発表によれば準備は進んでいる模様である。

【出典】
英国知的財産庁「Facts and Figures 2016
ジェトロ・欧州知的財産ニュース「英国知的財産庁、意匠料金の改定を公表(2016年10月7日)
英国知的財産庁「Twitter: IPO.GOV.UK 2017年12月21日付け

【参考】
ジェトロ・欧州知的財産ニュース欧州委員会、英国によるEU離脱に関するEU商標及び共同体意匠に係る通知を公表(2017年12月11日)
※EU離脱日である2019年3月30日までに離脱協定が合意に至らなかった場合(又は、期限が延長されなかった場合)、登録共同体意匠(RCD)及び欧州連合商標(EUTM)に関するEU法令がEU離脱日以降はイギリスで適用されないこと等についての通知を取り上げた記事

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