(※判決については、追記(2018年6月25日)を参照)

WesternGeco LLC v. ION Geophysical Corporation (No.16-1011)

2018年1月12日、米国連邦最高裁判所は米国特許法(35 U.S.C.)271条(f)項(日本特許庁提供の参考仮訳はこちら)に関して下記を争点とする事件について審理することを決めた。

<受理された裁量上告のQuestion(参考訳)>
35 U.S.C. 271条(f)項に基づき立証された特許権侵害の場合において、米国外で発生する禁止された組み合わせ(prohibited combinations)から生じる逸失利益(lost profits)は全面的に得られないと判示した点において、控訴裁判所は判断を誤ったか否か。

なお、下級審である連邦巡回控訴裁判所(CAFC)が2015年7月2日に下した判決では、3人の判事で構成されるパネルの多数意見は、特許発明の米国外での使用に基づく損害賠償に関して、合理的な実施料(reasonable royalty)が認められることは確認したものの、逸失利益については認めなかった。しかし、1人の判事は、逸失利益に関する多数意見の判断に対して反対意見を示していた。

本件の争点である法271条(f)項は、特許発明を構成し米国から供給された部品の全部又は一部を米国外で組み立てて完成品とする場合について特許権侵害に該当する行為を規定するもので、日本特許法に相当する規定はない。

この法271条(f)項については、連邦最高裁判所は過去にも判断を示しており、直近では、2017年2月22日判決のLife Technologies v. Promega事件において、条文における「all or a substantial portion of the c omponents of a patented invention」の文言は、質的ではなく量的なものを意味するとして、特許発明の1つの構成要素を米国外へ輸出する場合には適用されないと判示している。

また、2007年4月30日判決のMicrosoft v. AT&T事件では、米国外でゴールド・マスター・ディスクを使ってコンピュータにインストールされたウィンドウズの「コピー」は法271条(f)項(1)の部品に相当すると判断した一方で、実際のインストールにはディスクに保存されているコードの取り出し等を米国外において行う必要があることからディスクそのものは部品に該当せず、また、インストールされるものは米国外で作られた「コピー」であって米国から供給された部品ではないとして、Microsoft 社は、法271条(f)項(1)に基づいて侵害者としての責めを負うことはないと連邦最高裁判所は判示している。

***追記(2018年6月25日)***
現地時間の2018年6月22日、本件に対する米国連邦最高裁判所の判決が下された。判決では、争点であった米国外における逸失利益(lost profits)について特許権者の主張を認め、下級審の判決を破棄した上で差し戻した。なお、9人の判事のうち7人が本判決に賛成し、2人が反対意見を示した。

本件は米国特許法271条(f)項(2)の規定が適用される特許権侵害の場面における損害賠償を扱った事件であり、本判決の射程は、米国外のおける侵害者の行為全般ではなく、基本的には同条同項の規定が適用されるような場面に限られるものと考えられる。

【出典】
(1)米国連邦最高裁判所「Docket SearchNo. 16-1011
(2)米国特許商標庁「Manual of Patent Examining Procedure >> Appendix L – Patent Laws
(3)日本特許庁「諸外国の法令・条約等:アメリカ合衆国 特許法(参考仮訳)
(4)ジェトロ・米国発 特許ニュースMicrosoft v. AT&T事件、連邦最高裁、原審棄却の判決 ~ゴールド・マスター・ディスクの海外でのインストールは、特許法271条(f)に抵触せず~(2007年5月1日)
(5)日本弁理士会・知的財産最新情報 > 米国の情報発明を構成する構成部品のうちの一つの構成部品は特許法271条(f)(1)の「substantial portion」に該当しないことが認められた最高裁判決の紹介 Life Technologies Corporation et al. v. Promega Corporation(2017年8月25日)

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