北京知識産権法院 (2016)京73 民初276号

中国においては、2014年の審査指南改正により、GUI(グラフィカルユーザーインターフェイス)に関する意匠の保護が認められるようになっている(審査指南第一部分第三章4.2、7.4等)。

中国におけるGUI意匠は、日本と同じように物品に係るものである必要がある。また、部分意匠制度のない中国においては、GUIのデザインのほか、GUIが適用される物品の外観も図示した上で権利化しなければならない。例えば、スマートフォンのGUIを保護したい場合であれば、スマートフォンの筐体自体も意匠の内容に含まれた形での権利化となる。

標記事件は、GUI意匠(正確には、GUIを含む意匠というべきか)についての侵害成否が争われた初の事件である。

原告登録意匠は登録ZL201430329167.3であり、「GUIを備えたコンピューター」を物品名とするものであった。また、コンピューター自体の輪郭形状も、中国意匠制度に則り、図面上表されていた(下図は正面図)。一方、被告が作っていたのは似たようなGUIがコンピューター上で表示されるソフトウェアであり、コンピューターではなかった。

登録ZL201430329167-3_正面図

事件の争点は、以下の2点である。

  1. 意匠に係る物品は意匠権の要素を含むべきか否か
  2. 当該GUIを含むソフトウェアのユーザーへの配信は、意匠権の侵害幇助行為に該当するか否か

1.については、原告はコンピューターという物品は原告意匠権に限定的な働きをしない、と主張した。つまり、GUI部分のみが権利内容であると主張したのである。しかしながら、この主張は受け入れられず、主に図面に基づき、意匠の簡単な説明も参照できるとする、意匠の権利範囲の原則的な判断基準に則り、非侵害と判断された。原告の当該主張は、現状の制度下では無理があったと考える。

2.については、侵害幇助行為に該当するためには、被告ソフトウェアをダウンロードしたユーザーの行為が意匠権の直接侵害を構成する必要があるとし、ユーザーの行為は意匠の実施行為である「製造、販売、輸入」ではないため直接侵害を構成せず、被告の行為は侵害幇助行為にも当たらないと判断された。

ソフトウェアが予めインストールされた状態の機器が市場に出回る場合には、現在改正が検討されている部分意匠制度が導入されることでGUIの保護が一定程度図られる。しかしながら、意匠権の侵害に該当する行為(専利法11条)に「使用」が含まれていない状況においては、ソフトウェアのみを作成する者に対するGUI意匠権の保護が非常に困難であることを浮き彫りにした判決である。

【参考】
ジェトロ「法令・法規 – 知的財産に関する情報 – 中国部門規定 国家知識産権局の「専利審査指南」修正に関する決定(第68号) 2014年3月12日発表(日本語仮訳原文)」
ジェトロ「法令・法規 – 知的財産に関する情報 – 中国部門規定 専利審査指南 2010年2月1日改正(日本語仮訳原文)」

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