1 はじめに
近年、企業が競争力を高めるために、外部の企業などと共同研究開発を行う事例が増えている。そこで、今回は、共同研究開発に関する独占禁止法上の問題について検討する。その中で、「共同研究開発の成果である技術を利用した製品に関する制限」について焦点を当てる。

2 「共同研究開発の成果である技術を利用した製品に関する制限」の概要
公正取引委員会が運用基準として示している「共同研究開発に関する独占禁止法上の指針」(以下「ガイドライン」という。)第2-2(3)ア[1]によると、「成果であるノウハウの秘密性を保持するために必要な場合に、合理的な期間に限って、成果に基づく製品の販売先について、他の参加者又はその指定する事業者に制限すること」は、原則として不公正な取引方法に該当しないとされている。

なお、「『合理的な期間』は、リバース・エンジニアリング等によりその分野における技術水準からみてノウハウの取引価値がなくなるまでの期間、同等の原材料又は部品が他から入手できるまでの期間等により判断される。」。

3 事例紹介
公正取引委員会は、独占禁止法に関して相談事例とその回答について公表している。以下では、「共同研究開発の成果等の競争者への供与の制限」に関する相談事例を編集・簡略化してご紹介する。
20180419-lawtopics

(相談事例要旨)
X社は、家電メーカーであり、家電製品Aの製造販売分野におけるシェアは約30%である。また、家電メーカーP、Q、R、Sの4社(以下「4社」という。)のシェアは合算で約5%であるが、今後事業の拡大が見込まれている。

X社は、家電製品Aの新モデルに使用する装置a1に関する技術αについて、部品メーカーY社との間で共同研究開発を行うことを予定している。なお、技術αは、家電製品Aの低コスト化を実現する技術である。

X社は、技術αを用いた装置a1の安定供給が可能となり、共同研究開発に要した投資を回収するまでには、開発後3年ないし5年を要すると考えている。

そこで、X社が、技術αの競争者への流出を防止し、共同研究開発に要した投資を回収するために、Y社に対し、「共同研究開発の成果である技術αの供与及び技術αを用いた装置a1の販売を4社以外の事業者については3年間、4社については5年間行わないものとする。」という条件を課すことを検討している事案。

(回答の要旨等)
X社が、共同研究開発の参加者であるY社に対して、成果である技術αの供与及び当該技術を用いた装置a1の販売を第三者に行うことを一定期間制限する際、特定の4社に対してのみ制限期間を長期とすることは、4社の取引の機会を減少させ、競争が阻害されるおそれがあることや、制限期間に差を設けることに特段の合理的な理由が見当たらないことから、独占禁止法上問題となるおそれがある。

4 まとめ
ガイドラインや相談事例を踏まえると、共同研究開発の成果である技術を利用した製品の第三者への販売を合理的な期間に限って制限すること自体は、独占禁止法上問題はないといえる。

しかし、合理的な期間内であったとしても、事例のように特定の会社と他社との間で制限期間に差異を設けることは、合理的な理由がない限り、独占禁止法上問題となる可能性がある

共同研究開発は、企業が競争力を高める上で有効であるが、その際には独占禁止法上の問題についても留意する必要がある。

【出典】
公正取引委員会「共同研究開発に関する独占禁止法上の指針
公正取引委員会「相談事例集:(平成28年度)3 共同研究開発の成果等の競争者への供与の制限

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