ツイッターへの画像の投稿やそのツイートのリツイート行為についての著作権等の侵害について、平成28年9月15日の東京地裁の判決をご紹介しましたが、このたび、その控訴審判決が知財高裁から出されました。(知財高裁平成30年4月25日判決

1.原審
本件は、原告(控訴人)の著作物である写真(以下「本件写真」といいます)が、ツイッターにおいて、無断でアカウントのプロフィール画像として用いられたり、画像つきツイートの一部として用いられ、さらに当該ツイートのリツイートが行われたことにより、著作権侵害等が争われた事案です。プロフィール画像への設定と、画像つきツイートによる表示が著作権(公衆送信権)を侵害することは当事者に争いがないため、ここでは、リツイート行為についての著作権侵害について説明します。

一審の地裁判決では、リツイートによって表示されるのはリツイート元のリンクでしかなく、リツイートしたアカウントのタイムラインのURLからデータを送信するものでないとして、リツイート行為による公衆送信権の侵害を否定しました。また、いわゆる「まねきTV」判決(最三小判平成23年1月18日判決・民集65巻1号121頁)を参照して、本件写真を公衆送信し得る状態を作出したのは、元のツイートのアカウントであって、リツイートしたアカウントでないと判断しました。

さらに、このようなリツイートの仕組み上、リツイート行為について本件写真の画像ファイルの複製も行われないし、画像ファイルの改変もないから同一性保持権侵害もなく、本件リツイート者らから公衆への本件写真の提供又は提示があるとはいえないから氏名表示権侵害も成立しない、などとしました。

2.著作者人格権
これに対し控訴審は、一審と同じく、結論として公衆送信権や複製権等著作権侵害は否定したものの、著作者人格権についてはその侵害を認めました。そこで控訴審の説明に入る前に、著作者人格権について説明したいと思います。

著作物は創作者の感性の発露として見られるものであり、単に財産的価値だけでなく、作品に対する人格的価値、すなわち、いわゆる「思い入れ」を保護する必要があると考えられています。そのため、著作者は、著作によって、財産権としての著作権のほかに、人格権としての著作者人格権を取得します。

著作者人格権は、公表権、氏名表示権、同一性保持権に分類されます。

公表権:未公表の著作物を世に出すか田舎を決定する権利
氏名表示権:著作物の原作品上、または著作物を公衆に提供するに際に、どのような名前を表示するか、あるいは著作者名を表示しないかを決定することができる権利
同一性保持権:著作者が著作物やその題号を改変するか否かを決する権利
名誉声望保持権:著作者の名誉または声望を害する方法で著作物を利用する行為は著作者人格権侵害行為とみなされる

本件では、上記のうち、同一性保持権、氏名表示権等の侵害が争われました。

3.控訴審
著作者人格権の侵害を否定した原審に対し、控訴審は、その侵害を認めました。

控訴審は、前提事実として、リツイート行為により、ユーザーのパソコン等の端末に,本件写真の画像を表示させるためには,どのような大きさや配置で,いかなるリンク先からの写真を表示させるか等を指定するためのプログラムが送信され、そのことにより,リンク先の画像とは縦横の大きさが異なった画像や一部がトリミングされた画像が表示されることがある、とし、同一性保持権について下記のように判断しました。

 表示される画像は,思想又は感情を創作的に表現したものであって,文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するものとして,著作権法2条1項1号にいう著作物ということができるところ,上記のとおり,表示するに際して,HTMLプログラムやCSSプログラム等により,位置や大きさなどを指定されたために,本件アカウント3~5のタイムラインにおいて表示されている画像は流通目録3~5のような画像となったものと認められるから,本件リツイート者らによって改変されたもので,同一性保持権が侵害されているということができる。

また、氏名表示権については、下記のように判断しました。

 本件アカウント3~5のタイムラインにおいて表示されている画像には,控訴人の氏名は表示されていない。そして,前記(1)のとおり,表示するに際してHTMLプログラムやCSSプログラム等により,位置や大きさなどが指定されたために,本件アカウント3~5のタイムラインにおいて表示されている画像は流通目録3~5のような画像となり,控訴人の氏名が表示されなくなったものと認められるから,控訴人は,本件リツイート者らによって,本件リツイート行為により,著作物の公衆への提供又は提示に際し,著作者名を表示する権利を侵害されたということができる。

なお、名誉声望保持権については、侵害が否定されました。

4.雑感
原審では、リツイートしても元の投稿へのリンクが貼られるだけで、そこにある著作物に改変が加えられていないとして、著作者人格権の侵害が否定されました。一方、控訴審では、リツイートすると、タイムライン上で著作物が異なった形や大きさで表示されるとして、同一性保持権や氏名表示権の侵害を認めています。

ツイッターを利用している方はおわかりと思いますが、誰かのツイートをリツイートすると、そのツイートが自分のタイムラインに表示されます。この際、縦長の画像などは、タイムラインの表示との都合上、上下が切り取られて、一部のみが表示されることがあります。またその際、画像の下部に記載された著作権者の氏名等が切り取られることがあります。控訴審はこの点を捉えて、同一性保持権、氏名表示権の侵害を認めました。

ツイッターユーザーからすると、リツイートの場合、すでに誰かがウェブ上にアップロードしているものを紹介するだけという感覚があることが想像され、リツイートしただけで著作者人格権の侵害というとやや厳しすぎると感じるかもしれません。他方著作権者からすると、リツイートは著作権侵害の拡散にほかならず、リツイートした人に対しても何らかの請求をしたいと考えるでしょう。

ツイッターの場合、元ツイートが削除されるとリツイートによって表示されたツイートも消えることになり、著作権侵害を差し止めたいという文脈であれば元ツイートだけを狙えばいいことになります。また、損害賠償を請求するにしても、リツイート行為による損害の算定は困難かつさほど大きくないと思われ、結局は元ツイートをしたことでどんどんと拡散してしまったとして、それゆえに被った損害を元ツイート者に直接賠償請求するとしたほうが簡単かもしれません。その意味ではリツイート者にまで侵害を認めるのは、価値判断としてはやや厳しいとの感覚も残ります。

 

(弁護士:水野 秀一)

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