「マックカレー事件」 in マレーシア

「マックカレー」と聞いて、皆さんは何を連想したでしょうか。 ファーストフード店の「マクドナルド」が提供する「カレー」のことかな?と思った方も少なくはないと思います。
さて、この「マクドナルド(McDonald's)」が、マレーシアにおいて、カレーレストランの店名として「マックカレー(McCurry)」を使用している者に対し、商標権侵害を理由として使用差止めを求めていた裁判で、マレーシア最高裁は9月8日、マクドナルド側の訴えを棄却したとのことです。これにより、マクドナルド側の敗訴が確定しました。

(1)本事件は、ファーストフード企業の王手である「マクドナルド(McDonald's)」が、マレーシアの小さなレストランである「マックカレー(McCurry)」に対して、「Mc」部分に基づき、商標権侵害を理由として使用差止めを求めていた事件です。本事件は、今回の最高裁の判決によって決着が付くまでに、実に約8年もの歳月を要しています。

(2)まず、第1審では、マクドナルド側の主張が認められ、マックカレーに対して、「マックカレー(McCurry)」の看板から「c」の文字 を削除し、「M Curry」とすべき旨の命令がなされました。この判断は、当然ながらマックカレー側にとって承服できるものではなく、彼らは控訴をしました。(なお、マックカレーは、それから数年の間、この「M Curry」という店名で営業を続けたそうです。)

(3)控訴審では、一転して、「マックカレー(McCurry)」の「Mc」の部分は、マクドナルドの商標権を侵害しておらず、マクドナルドが接頭語の「Mc」を独占することを認めた第1審の判断は誤りであるとの判断がなされました。なお、マックカレー側は、「マックカレー(McCurry)」とは、「マレーシア・チキン・カレー」を縮めたものであるという旨を主張していました(一方、「McDonald's」の「Mc」は「息子」という意味)。逆転敗訴となったマクドナルド側は、この判断に対して上告をしました。

(4)そして、今回の最高裁では、控訴審の判断が支持され、マックカレーが店名に「Mc」を使用したことによってマクドナルドと何らかの関係があると認識されることはなく、商標権についても侵害しないとの判断がなされました。これにより、マクドナルド側の敗訴が確定したことになります。

(5)ここで、本事件で問題となった「マックカレー(McCurry)」の店舗看板を見てみると、チキンの図柄と「McCurry」の文字を斜体で表わしてなるものから構成されており、色合いも、私たちのよく知っているマクドナルドのイメージカラーとは異なっているように見えます。したがって、(日本人である私たちの感覚に基づけば)、マレーシア最高裁が判断したとおり、「マックカレー(McCurry)」が、マクドナルドと何らかの関係がある店舗であると一般的な消費者等に認識される可能性は決して高くはないのではないかと思います。

(6)本事件はマレーシアにおける事件ですが、たとえば、これが仮に日本での話であるとすればどうでしょうか。我が国で「マック」といえば、ファーストフード店の「マクドナルド」か、コンピュータの「マッキントッシュ」を一般的に連想しますし(関西方面では「マクド」とも言うようですが・・・)、「マック○○○」というマクドナルドの商品名も、多くの人々にとって馴染み深いものでしょう。具体的な表示態様によっても異なるとは思いますが、これと同様の事件が我が国で起こった場合、どのような法的根拠で訴えが提起され、また、どのような理由で裁判所による判断がなされ、最後に、どのような結論となるのか、いろいろと考えてみると非常に興味深いところです。

(7)なお、ハンバーガーについてのものではありますが、我が国における本事件と関連性のある過去の裁判例として、「マックバーガー事件」(昭和 51年 (ネ) 1839号)があります。

以上

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