Acacia Srl v Pneusgarda Srl and Audi AG and Acacia Srl and Rolando D’Amato v Dr. Ing. h.c.F. Porsche AG (Court of Justice of the European Union 2017) Nos. C-397/16 and C-435/16

欧州共同体意匠制度においては、スペアパーツの実施行為について権利行使を制限する条項が存在する。

『・・共同体意匠としての保護は、・・複合製品の元の外観を回復する修理のために、・・複合製品の構成部品を構成しているものについては、存在しないものとする。』(理事会規則110条(1))

自動車を例に分かり易く説明すれば、自動車という完成品(複合製品)の外観を回復する修理のために、自動車のドア(構成部品)を実施する行為に対しては、ドアの意匠権が及ばないとする規定である。つまり、スペアパーツについて意匠登録を受けられない、とする規定ではない。

2017年12月に欧州連合司法裁判所(CJEU)から、この条項の適用に関する判決が出たのでご紹介する。

ちなみに、事件は、ドイツの自動車メーカー(Audi、Porsche)とイタリアのホイールメーカー(Acacia)がホイールの意匠権侵害を巡って別々に争っていたところ、同条項の適用に関してCJEUで併合して審理することとなった事案である(Audi等が意匠権者)。

判決では、以下の点が判示された。

  1. 同条項は、構成部品の形状が、完成品の外観によって不変的に規定される場合に限って適用されるとするものではなく、完成品が市場に投入された際に当初から組み込まれていた構成部品と同一の外観を備えている場合に適用されるべきである。
  2. 同条項を適用するには、スペアパーツの製造・販売者には、下流ユーザー(スペアパーツの購入者、修理業者等)に対して同条項の要件(修理目的等)を順守することを奨励する義務がある。

1.については、例えばボンネットの形状の様に自動車全体の外観によって規定されるような構成部品に限定して適用すべき、とするPorscheによる主張だったが、受け入れられなかった。同条項を文言通りに解すべきということが明確になったと言える。

2.については、さらに詳細には、(1)製品やパッケージ、カタログ等に、製造・販売者は意匠権者ではない旨と、完成品の修理目的にのみ使用しなければならない旨を明記すること、(2)製造・販売者は下流ユーザーが同条項に沿わない使用をする意思が無い旨を適切な手法(契約等)で確実なものとすること、(3)製造・販売者が、構成部品が同条項に沿って使用されないことを知っているか、合理的に知ることができる場合には販売してはならないこと、を判示している。このような義務が、実際の経済活動においてどのように実践されるのかはまだまだ未知数であるが、意匠権者の視点からは、スペアパーツ業者が上記の義務を果たしているかをしっかりとチェックした上で権利行使を行う必要があると言える。

【出典】
日本特許庁「諸外国の法令・条約等意匠理事会規則 第110条(仮訳)

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